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2007年度日本地震学会論文賞を受賞

高精度即時震源パラメータ解析システム(AQUA)の開発
日本地震学会の学術誌「地震」または「Earth, Planets and Space」に発表された優れた論文により、地震学に重要な貢献をしたと認められる者が日本地震学会論文賞に選ばれます。

受賞論文

「高精度即時震源パラメータ解析システム(AQUA)の開発」
松村稔・伊藤喜宏・木村尚紀・小原一成・関口渉次・堀貞喜・笠原敬司

地震2、No59,167-184、2006

受賞理由

深部低周波微動とスロースリップの分布

本論文は,日本全国に展開された防災科学技術研究所(防災科研)の高感度地震観測網Hi-net及び広帯域地震観測網F-netのデータを即時的に 解析し,震源要素からセントロイド・モーメントテンソル(CMT)解の推定,ならびに解析結果の情報発信までの一連の処理をすべて自動的に行うAQUAシ ステムの構築と,その信頼性について議論したものである。

本システムは,一般に対する情報公開を強く意識して開発されており,震源要素からCMT解までを迅速かつ精度良く推定すること,ならびにインター ネットを通じた即時的な情報公開を行うことを達成した点は特筆すべき点である。従来の自動処理システムにおけるP波初動極性による発震機構解の推定には任 意性があり,特に海域の地震については解が決定できない場合が多かった。本システムでは,波形解析によるCMT解を推定することによってこの問題点を克服 したことに加え,非常に高速な処理を実現した。防災科研F-netでは自動MT解の推定に約20分を要するのに対し,AQUAシステムではイベント検知か ら30秒~1分後に決定される震央・震源位置の情報を使用することにより,2~7分後に暫定MT解を,4~12分後にはCMT解を推定することが可能に なった。震央・震源・MT解・CMT解の情報は,決定されるたびに随時更新されホームページに掲載されていく。これらの情報にアクセスすることにより,誰 でも地震発生後の早い段階でその地震の発生様式を把握できるようになった。そのため本システムは,一般向け情報提供としての意義以上に,地震・防災研究コミュニティ構成員にとっても,現在進行中の地震活動への注意喚起や,その基 礎的な情報の共有を実現できるきわめて有用なシステムとして高い評価を得ている。

本論文は,システム開発の技術的な紹介のみならず,その結果の検証及び他のカタログとの比較も十分に行い,本システムの信頼性を客観的に評価して いる点も注目に値する。一般の人が関心を持つある程度以上の大きさの地震についてみると,例えば最大震度4の地震は90%程度検知可能であり,観測網が展 開されている陸域ではMJMAが5.4以上の地震のほとんどすべてが検知されている。

また,Mw6.0以上の地震のAQUA-CMT解は,世界標準としてのハーバード大学CMT解とほぼ一致している。このことは,本システムにおける即時自動処理の結果が十分に信頼に足ることを示すものである。

本論文で紹介・検討されているものは,一般社会ならびに地震・防災関係研究者が求めている迅速かつ正確な地震情報提供需要に応えた意義深い成功例であり,日本地震学会論文賞にふさわしいものと考える。

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