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永松研究員が日本計画行政学会奨励賞を受賞

防災システム研究センターの永松伸吾研究員が「新潟県中越地震直後の小千谷市における贈与経済の発生メカニズムと経済復興に与える影響に関する分析 (計画行政第 30巻第 1号 、通巻 89号、2007年)」により、日本計画行政学会奨励賞を受賞し、9月20日に東京大学で受賞式が行われました。

本論文は、収集困難であるデータを丹念に分析し、災害時における贈与経済の発生メカニズムと経済復興に与える影響を定量的に算出するとともに、政策的なインプリケーションも示しており、完成度が高いと評価されました。

なお本研究は、永松研究員が、人と防災未来センター在籍時に取り組んだものですが、昨年当研究所より出版された『地震に負けるな地域経済:小千 谷・柏崎発「弁当プロジェクト」のススメ』の基礎をなす研究でもあり、永松研究員が所属する「災害リスク情報プラットフォーム研究プロジェクト」にその成 果は引き継がれています。

表彰盾を受ける永松研究員

選考理由(授賞式配布資料より抜粋・編集)

近年、地震を中心とした災害が発生しており、それに関連して被災後の地域経済復興が大きな政策課題として認識されています。被災地経済は政争的立場 にある他地域に取って代わられる危険性を有するため、被災直後の対応のみならず、復興する時間的経過においても迅速且つ効果的な経済復興が必要不可欠とい えます。

しかしながら、これからの潜在的な被災地に対して、具体的にどのような対策を講じればよいかといった研究は、これまでほとんど行われてきませんで した。地域経済の活動をできる限り維持し、また早期に活動再開させるための方策が災害対応の中で充実されれば、経済復興過程での様々な困難を軽減すること は十分可能と考えられます。

以上のような問題意識のもと、本論文は、巨大地震災害後に被災地に発生する贈与経済の影響と、その発生メカニズムについて考察を加えながら、被災 した地域経済の早期回復方策の検討に貢献することを目的としています。論文で特に取り上げる「贈与経済」とは、災害直後にしばしば観察される義援物資など が無償で提供される経済とし、貨幣を媒体とした交換によって成立する「市場経済」との対比によって設定するものです。論文では、中越地震を対象として、贈 与経済の実態把握、贈与経済が被災事業所に対して及ぼした影響の統計的把握を行った後、贈与経済発生のメカニズムを理論的に考察し、政策的含意について論 じています。

分析の結果、被災事業所の業態によって贈与経済の効果が異なること、地域経済の早期回復を図るためには、贈与を可能な限り抑制し、災害関連需要を 被災地内に循環させる方策が有効であることを導出しています。これらより、政策的含意として、市場経済への移行をスムースに行うためには、経済主体の取引 費用を低下させるための施策が有効であり、例えば、どのような商店、事業所がいつ営業を再開し、何をどの程度提供できるかといった情報を取りまとめ、被災 地域で共有する仕組みなどが、これに相当するものとして提案しています。

以上のように、本論文は時宜にかなったテーマを設定しており、収集困難であるデータを丹念に分析し、贈与経済の発生メカニズムと経済復興に与える 影響を定量的に算出しているとともに、政策的なインプリケーションを示した完成度の高い論文と考えられます。一方で、住民、行政などの関係主体を取捨して いること、被災にともなう供給量変化が考慮されていないなどの課題がみられますが、本論文の社会的意義、分析結果の有用性を勘案すると補って余りある成果 を有します。以上より総合的に判断して,本論文を奨励賞受賞に値する論文として推薦します。

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