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2014年度日本地震学会論文賞を受賞

2014年度日本地震学会論文賞を受賞を受賞

地震・火山防災研究ユニットの齊藤竜彦主任研究員が、2014年度日本地震学会論文賞を受賞しましたのでご報告いたします。

この賞は、日本地震学会の学術誌「地震」または「Earth, Planets and Space」で発表されたすぐれた論文により、地震学に重要な貢献をしたと認められる者を対象とした賞です。

本論文は、津波の発生から伝搬における様々な解を導出することに成功し、特に津波の発生過程の基礎的研究を格段に進歩させたことから、地震学会論文賞にふさわしいと判断され今回の受賞に至ったものです。

授賞式は,2015年5月の日本地球惑星科学連合2015年大会時に開催する総会で行われる予定です。


受賞対象論文

Dynamic tsunami generation due to sea-bottom deformation: Analytical representation based on linear potential theory

・著者: Tatsuhiko Saito

・掲載誌:Earth Planets and Space, 65, 1411-1423 (2013)

http://svr4.terrapub.co.jp/journals/EPS/pdf/2013/6512/65121411.pdfBlank

受賞理由

本論文では、水平な海底面を仮定し、津波の発生から伝搬における様々な解を導出することに成功している。具体的には、海水を非圧縮と仮定し、流れの速度ベクトルのポテンシャルφを導入して、ラプラスの方程式を、海面と海底面での境界条件のもとで解析的に解いている。その結果、震源時間関数がデルタ関数、及び任意の関数の場合の時間領域におけるφを求めることに成功し、さらに海底面での圧力、海水中の流れの速度、海面での波高の時空間分布を数式の形で明示的に示している。従来の津波に関する研究が、主として津波の伝搬や静的な断層すべりの分布を研究対象としていたことを考えると、本論文は特に津波の発生過程の基礎的研究を格段に進歩させたと言える。

従来の津波の伝搬のみを扱う場合の流れの速度、海面での波高の時空間分布の数式とも比較することで、今回新たに導出した津波発生の項の持つ意味についても考察し、この項には海底面での地殻変動を海面での波高に焼き直す深さフィルターが含まれていること、大きな震源域の場合、海水中で鉛直方向の流れがより起こり易くなることなどを示した。

また、2次元モデルを用いて、津波の発生から伝搬に至る海面での波高と海水中の流れの速度に関する時空間分布の計算例を示し、視覚化により読者の理解を助ける工夫をしているとともに、小さな震源域の場合、津波に分散が生じることを示している。

また、今回新たに導出した海底面での圧力の動的な震源項について定量的な議論を行い、海底面が深く、震源過程の継続時間が短くなるにつれて、海底面での全圧力に占めるこの項の割合が非常に大きくなり、動的な震源過程の効果が無視できないことを示した。このことは、特に海溝型巨大地震のすべり領域の直上にある海底圧力計の波形を使用することで、その地震の動的な震源過程を明らかにすることが可能であり、さらにそれをより迅速かつ正確に推定することで、より正確な津波の早期警報の実現の可能性が高まることを意味する。

論文全体にわたって、丁寧な記述がなされ、数式の各項の持つ物理的な意味についてもわかり易く書かれている。

今後、観測に見られる音波を扱うことのできる海水の圧縮性を考慮した場合の数学的表現や、より一般的な傾斜した海底面と震源時間関数や震源域との関係に関する解析など、さらなる研究の発展も見込まれる。

以上の理由より,本論文は平成26年度日本地震学会論文賞とする。

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