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2016年度日本地震学会論文賞を受賞

地震津波防災研究部門の武村俊介特別研究員が共同研究者として執筆に参加した「Geographical distribution of shear wave anisotropy within marine sediments in the northwestern Pacific」が2016年度日本地震学会論文賞受賞対象論文となり、武村俊介特別研究員が同賞を受賞しましたので報告いたします。

この賞は、日本地震学会の学術誌「地震(学術論文部)」または「Earth, Planets and Space」「Progress in Earth and Planetary Science」に発表したすぐれた論文により、地震学に重要な貢献をしたと認められる者を対象として日本地震学会から贈られる賞です。

授賞式は2017年度日本地震学会秋季大会で行われる予定です。


受賞対象論文

受賞対象論文:Geographical distribution of shear wave anisotropy within marine sediments in the northwestern Pacific

著者:利根川貴志・深尾 良夫・藤江剛・武村俊介・高橋努・小平秀一

論文へのリンクBlank

論文の日本語AbstractBlank

受賞理由

海域では、構造探査によって海底下浅部の詳細なP波速度構造が明らかにされてきた。S波速度構造に関しては、P-S変換波を用いて推定することも行われているが、そこから更にS波異方性構造に関する情報を抽出した例は稀である。これは、人工震源を用いると震源でS波が励起されないこと、また自然地震を用いるには観測期間が限られていることが原因である。本論文は、海底構造探査記録から人工震源にも自然地震にも頼らずにS波異方性構造を求めた最初の論文であり、結果の重要性と手法の斬新さを併せて海底構造探査の発展方向の1つを示すものとなっている。

北西太平洋に設置された254台の海底地震計の常時微動記録に地震波干渉法を適用し、その多くの観測点で音響基盤上面からの反射S波が抽出された。さらに、S波の振動方向による反射S波の走時差(異方性の大きさ)とその差が最も大きくなる方位(速い軸の方位)を観測点ごとに推定することで、北西太平洋の400×400km2の範囲において、世界でも類を見ないほど広域かつ稠密に海底堆積物の異方性構造をマッピングすることに成功している。

得られた異方性の空間分布は、アウターライズ域では速い軸は海溝軸に平行で、千島海溝と日本海溝の接合部では、海溝軸の方向の変化にも対応して速い軸の方向が変化している。本論文では、このアウターライズ域の海底堆積物の異方性構造は、太平洋プレートの上に凸の折れ曲がりによる伸張応力場によって配向した亀裂が形成され、その構造が地震波速度の異方性を形成していると結論づけている。また、得られた反射S波や振動方向による走時変化を再現するため、常時微動の励起源を想定して等方性・異方性媒質における3次元波動伝播シミュレーションも行っている。それらの結果から、干渉法で抽出された反射波の走時差が何に起因しているのか(励起源分布の不均質性や、傾斜面・異方性などの構造の不均質性)を丁寧に評価している。

近年の世界における海底観測の充実性は目覚ましいものがあり、海底記録から新たな情報を抽出するための手法開発は重要である。本論文では新たな手法の有効性が実証されており、今後の海底地震観測研究に大きく貢献することが期待される。以上の理由により、本論文を 2016 年度日本地震学会論文賞とする。

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