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2016年度日本地震学会若手学術奨励賞を受賞

地震津波防災研究部門の武村俊介特別研究員が、2016年度日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しましたのでお知らせいたします。

この賞は、すぐれた研究により地震学の分野で特に顕著な業績をあげた35歳以下の会員に贈られます。授賞式は,日本地球惑星科学連合2017年大会時開催の定時社員総会で行われました。

2016年度日本地震学会若手学術奨励賞 表彰式の様子

公益社団法人日本地震学会会長 山岡耕春先生(左)、武村俊介特別研究員(右)


受賞対象研究

地震波形解析と波動伝播計算に基づく地球内部の短波長構造の研究
2016年度日本地震学会若手学術奨励賞

最近の研究事例(上図):沈み込むフィリピン海プレートが震源決定に及ぼす影響。三重県南東沖の地震で観測された(a)初動極性分布と(b)Hi-net上下動成分速度波形。初動は陸域では全て上向きの震動極性で始まっており、かつ速い(7.2 km/s)見掛け速度を持つことが分かる。沈み込むフィリピン海プレートなどを考慮した3次元地震動シミュレーション(c)により、F-net MT解で初動極性分布と初動の見掛け速度を再現することに成功した。海洋プレート付近で発生する地震の場合、1次元速度構造を仮定したHi-net初動解では射出角と深さを誤推定することを明らかにした(Takemura et al., 2016 EPS)。

受賞理由

受賞者は、地球内部の短波長不均質構造と地震波伝播特性の理解の深化のため、データ解析とともに、高性能計算機を用いた波動伝播計算に基づくモデル検証を推し進め、基礎・応用研究に取り組んできた。そのおもな業績は以下の通りである。

震源 S 波放射パターンの崩れの原因を、地殻・マントルの短波長不均質構造による散乱と地表地形による散乱とに分類することに成功し、さらに、解析対象を P 波に拡げ、震源放射パターンの崩れを包括的に再現できることを示した。この成果を踏まえて膨大な地震波形記録を解析し、短波長不均質構造の分布特性が東北日本と西南日本では異なることを示した。

また、フィリピン海スラブのトラップ波の解析に基づき、海洋性地殻の短波長不均質性が短周期地震波の伝播特性を決定づけることを明らかにし、その形成には脱水が関与している可能性を指摘した。さらにスラブ上部マントルの低速度異常にも強い不均質性が内包され、強震動の生成に影響を与えていること示した。

これら一連の研究は、比較的単純なスラブのイメージから、短波長不均質構造を有する複雑なイメージへと転換させ、震源メカニズム推定にも影響することを示した。

さらに、これまでの短波長不均質構造による地震波伝播・散乱に関する研究では、統計的な近似によるモデル化が主流であったが、受賞者は、高性能計算機を用いた数値計算により、散乱現象を再現することに成功した。また、膨大な波形記録を解析し、地殻構造、震源過程、地震テクトニクスの解釈、さらには、工学分野への応用可能性を示してきた。これらの成果は、堆積盆地における長周期地震動の増幅メカニズムの新たな解釈にも適用されている。

以上の理由から受賞者の優れた業績を認め、その将来性を期待し、日本地震学会若手学術奨励賞を授賞する。

受賞研究者のコメント

2016年度日本地震学会若手学術奨励賞の賞状

日本地震学会 若手学術奨励賞という栄誉ある賞を頂き、大変光栄に思います。推薦人の皆様、これまでの共同研究者の皆様、関連分野の皆様からのご指導とご鞭撻のおかげで、たくさんの研究テーマに携わることができ、今回の受賞に至ったものと思います。

防災科学技術研究所が管理する基盤的地震観測網のデータから地震波伝播の特徴を抽出し、地震動シミュレーションにより、その特徴を再現する不均質構造モデルを模索するという研究スタイルでこれまで研究を続けてきました。観測網の運用に携わってこられた皆様、地震動シミュレーションの分野を切り開いて来られた皆様にも深く感謝申し上げます。

今後も、地震波伝播という理学的側面と、その応用研究である工学分野への適応を目指し、尽力していきたいと考えております。今後も変わらぬご指導とご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

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