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2018年度日本地震学会論文賞を受賞

地震津波防災研究部門の浦田優美特別研究員、福山英一総括主任研究員、地震津波火山ネットワークセンターの久保久彦特別研究員が、東北大学大学院理学研究科地震・火山噴火予知研究観測センターの吉田圭佑助教とともに、2018年度日本地震学会論文賞を受賞しましたので報告いたします。

この賞は、日本地震学会の学術誌「地震(学術論文部)」、「Earth, Planets and Space」、「Progress in Earth and Planetary Science」に発表されたすぐれた論文により、地震学に重要な貢献をしたと認められる者を対象として日本地震学会から贈られる賞です。

受賞対象となった論文「3-D dynamic rupture simulations of the 2016 Kumamoto, Japan, earthquake」(2016年熊本地震の3次元動的破壊伝播シミュレーション)は、2016年熊本地震の事例を通して、観測データと大規模シミュレーションを融合させることで、巨大地震の現実的な発生シナリオを合理的に提示できることを示したことから、地震学会論文賞にふさわしいと判断され今回の受賞に至りました。

授賞式は、2019年9月の2019年度日本地震学会秋季大会で行われる予定です。

受賞対象論文

3-D dynamic rupture simulations of the 2016 Kumamoto, Japan, earthquake
 

著者:浦田優美、吉田圭佑、福山英一、久保 久彦

掲載誌:Earth, Planets and Space, 第69巻, 150, https://doi.org/10.1186/s40623-017-0733-0, 2017.Blank

受賞理由

大地震の発生を規定する要因である地震前応力場や断層面における摩擦パラメータ等を実際の観測データから明らかにすることは、大地震の発生前に現実的な地震シナリオを想定する観点からもきわめて重要である。

本論文は、2016年熊本地震(Mw7.1)において、背景応力場と前震による応力変化を考慮することで、本震の破壊が実現しうる力学的条件を明らかにした。まず、余震分布の精密再決定からM6クラスの前震の断層面および2枚の断層面から構成される本震の断層面を決定した上で、前震にともなう本震断面上における静的応力変化を見積もった。その結果、前震によるクーロン応力変化(ΔCFS)は震源付近で正となり、前震が本震の破壊開始を促進させうることが明らかになった。一方で、震源よりも浅部の広い範囲でΔCFSは負となり、地震前応力(せん断応力)が小さければ、破壊は浅部には伝搬せず、M7クラスの本震を再現できないことが明らかになった。次に本震を発生させうる力学条件を解明することを目的とし、地震前応力場と前震による応力変化の和を初期応力分布とした三次元動的破壊伝播シミュレーションを、地震前応力の大きさと断層面上における摩擦構成パラメータを変化させた約150ケースで実施した。その結果、本震を再現しうる地震前応力の範囲および摩擦構成則を推定することに成功した。

著者らが、前震による応力変化と本震破壊による応力解放に必要な力のバランスに着目するという考えを提唱し、観測データと大規模シミュレーションの組み合わせによって地震前応力場の推定を実現させたことは、重要な成果である。さらに、これらの成果は観測データから設定する応力場と動的破壊伝播シミュレーションを複合させることで、巨大地震の現実的な発生シナリオを合理的に提示しうることを示唆するものであり、自然現象を予測する能力を持った科学としての地震学が目指すべき方向性を提示する研究と考えられ、その重要性は高い。

以上の理由から、本論文を2018年度日本地震学会論文賞とする。

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