沿革

 大型耐震実験施設は、1965 年から学識経験者、関係研究機関とともに検討審議を重ね、各省庁試験研究機関、大学、民間の研究者の共用利用施設として計画、建設されたものである。

 1967 年 10 月に大型耐震実験装置の工場製作に着手し、1968 年 10 月に筑波研究学園都市の建設第1号として、同実験装置基礎工事に着工し、地下湧水処理など幾多の困難を克服して、実験・制御棟、作動油冷却設備、受変電設備、給水設備、資材倉庫等を整備し、総額 9 億 5 千万円の経費により 1970 年 6 月に完成した。

 完成当時の同実験装置は、加振台大きさ 15m×15m、最大搭載量 500ton の規模を持ち、加振機、ポンプユニット、制御装置、計測装置を有し、作動油冷却設備、受変電設備、実験・制御棟など建屋と共に実験施設を構成し、この種の実験施設としては世界最大級のものであった。同実験装置の加振台は、水平垂直の切換の加振ができ、90ton 出力の加振機各 4 台を使用し、最大振幅±30mm、最大速度 37cm/sec、水平加振時における 500ton 搭載時の最大加速度は 0.55G。また、垂直加振時における 200ton 搭載時の最大加速度は 1.0G の性能を有していた。

 同実験装置の駆動方式は油圧式で、作動油は油槽からポンプユニットに送られ 20.6MPa に加圧され、電気信号により作動するサーボ弁を通じて加振機に入りプランジャーを動かして振動台を振動させる。この後作動油は熱交換器に入り油槽へ戻る。この主油圧源とは別に副油系等の作動油は同様にポンプユニットで 13.7MPa に加圧され、静圧軸受け、ガイドシリンダ等の油圧機器に供給され、スカベンジ装置(油類集合装置)から熱交換機に入り油槽へ戻る。実験時には、振動台はガイドシリンダで回転を押さえて、静圧軸受けで 0.1〜0.15mm 浮揚させている。

 開設から 16 年後、性能低下及び耐震工学上の要請に応えるため 1986 年から 1988 年にかけて機械系の更新を行い、更に 1989 年に基礎補強工事を行った。更新後は、波形の再現性を重視し水平 1 方向固定、加振台大きさ 15m×14.5m、最大振幅±220mm、最大速度 75cm/sec となった。本更新により、強震観測で得られた地震動記録を正確に再現でき更に、より長い周期を有する構造物の応答特性の確認等利用範囲が広がった。

 更に、1995 年兵庫県南部地震後に、サーボバルブを加振機 1 台当たり 2 台から 3台に増強し、最大速度 100cm/sec に改善を行った。その結果、多方面で利用されている強震記録JMA 神戸海洋波において、水平 1 方向加振ではあるが、加速度、速度、変位において最大 110%の再現性を有するようになった。これらの機能向上により、構造物等の破壊機構の解明や、より長い周期を有する構造物等の応答特性の確認等、これまで以上に幅広い耐震工学の要請に応えることができるようになりました。

 1970 年 6 月の稼働開始以降 50 年以上の間、様々な実験研究等を実施してきましたが、2022 年 1 月、所定の加振性能が再現できなくなる重大な故障が発生し大型耐震実験装置の運用再開を見通すことが難しくなりました。このような状況を踏まえ、2022 年度以降の加振実験については受付を終了することとなりました。