地震・津波予測技術の戦略的高度化研究

観測データを駆使した最先端の研究で
地震・津波災害を軽減

2011年3月に発生した東日本大震災では、 地震と津波の防災に関するさまざまな課題が浮き彫りとなりました。
巨大地震やそれによる津波に適切に備えるには、正確な観測データを 迅速に入手し、その上で最大限に活用していくことが重要です。
「MOWLAS」から得られるデータとシミュレーションを駆使し、 地震動や津波の即時予測や地震発生の長期評価を高度化していくことで、 地震・津波災害の軽減に貢献しています。 

「揺れ」から「揺れ」を予測

 地震の揺れは発生からその時間経過とともに周辺に広がっていきます。この性質を利用して、今の「揺れ」の分布から、その後の「揺れ」の分布を直接予測する研究開発を進めています。たとえば「強震動即時補間システム」では空間的に不均一な観測データから複雑な地震動の面的分布を求めることができます。
また、高層ビルを長時間にわたって大きく揺らす長周期地震動や地下200km以上の深さで発生する深発地震など、対応が難しい地震動に関する予測技術の開発も行っています。

「津波の全過程」を予測

MOWLASの中でも、海域で地震や津波を観測するS-netやDONETのリアルタイム観測データを用いて、津波の襲来から第2波・第3波も含む津波の全過程を予測する研究開発を進めています。「沿岸に何分後に何メートルの波が来る」という従来の津波警報よりもより具体的な、「今いる場所に津波は到達するか」「いつごろ収束するか」といった予測を目指して研究開発を進めています。

「今いる場所に津波は到達するか」「いつごろ収束するか」といった予測のために、ある場所での浸水深と津波高を色と面積を用いて可視化した図
津波遡上即時予測システム(地図:地理院タイルを加工して作成)

地震発生の長期評価・高度化技術の開発

観測データの解析や大規模なシミュレーションを通して、地震の発生しやすさを長期的に評価する技術の高度化を図ります。また、南海トラフ巨大地震をはじめとする海溝型巨大地震に関連すると考えられる、ゆっくりすべり(スロー地震)のモニタリングおよびその発生メカニズムの解明も進めています。

Hi-netによって観測された2015年に日本列島で発生したマグニチュード2.5以上の地震の震源分布を示した図。1日500~1,000個発生する微小地震がどこで起こるのかを分析し、将来の巨大地震の発生予測に活かします。
※それぞれの点の色は深さを表し、深くなるに従って、赤から黄、緑、青へと色が変わっています。

Hi-netによって観測された地震の震源分布の動画

Hi-netによって観測された地震の震源分布(動画)

TOPICSさまざまなスロー地震の発見とモニタリング

南海トラフ巨大地震の想定震源断層域の周辺で発生している様々なスロー地震の分布図

MOWLASのHi-net等の観測から、南海トラフ巨大地震震源域周辺で通常の地震とは異なる微弱な揺れが発生していることが発見されました。この現象は通常の地震よりもゆっくりとした断層すべりに起因しており、スロー地震と呼ばれています。その後の詳細な解析から、すべりの継続する時間が異なるさまざまな種類のスロー地震が周期的に発生していることがわかりました。シミュレーション研究ではスロー地震が巨大地震発生に影響を与える可能性も指摘されており、モニタリング技術の高度化や発生メカニズム解明に向けた研究が進められています。

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