多角的火山活動評価に関する研究
火山を深く知ることで、火山とともに生きる

温泉や熱エネルギーの供給など、さまざまな恩恵を与えてくれる火山は、ひとたび噴火すれば大きな被害をもたらす脅威を秘めています。火山とともに生きるには、火山を知ることが欠かせません。
全国にある火山は気象庁や大学、研究機関が分担して、観測しています。
防災科研では1980年代から富士山や伊豆大島、三宅島、那須岳、硫黄島における観測を行ってきており、現在では16火山に55観測点からなる基盤的火山観測網「V-net」を展開しています。当プロジェクトでは、その観測データも活用して多角的アプローチで研究を進め、火山現象のメカニズム解明を進めるとともに、火山災害の予測や被害軽減を目指しています。
アプローチ1|地下のマグマ移動のイメージング
V-netによる観測や、リモートセンシング、地質学的調査に基づいて、噴火の際に地下でマグマがどのような動きをしているのかを捉えます。
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地面の傾斜の変化を調べ、2000年の三宅島の噴火前後に地下のマグマがどう移動したかを推測
アプローチ2|火山災害の事前・リアルタイム評価
衛星や各種計測機器の観測データから、どこに噴火口や割れ目ができるのかなど、噴火の位置や形態を推定し、そこからどのような災害がどのくらいの確率で発生するかを予測する技術を開発します。
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2018年霧島山新燃岳噴火(上)の際に撮影された火口周辺の衛星画像(左)および同噴火の溶岩流出シミュレーション(下)
アプローチ3|火山災害対策・対応技術の提案
火山の噴火による被害に対して、事前にどのような対策をするべきかを研究し、噴火発生時に迅速な対応をするための方策を開発しています。たとえば、都市部のインフラが降灰によってどのような被害を受けるかを予測する仕組みを、関係機関の資料を基に構築しています。
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2016年阿蘇中岳噴火の降灰被害分析
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那須岳噴火に伴う降灰被害のシミュレーション
TOPICS霧島山新燃岳の噴火時のマグマの移動過程を解明

2011年と2018年に噴火した霧島山新燃岳の観測データから、複数回の噴火を通して間欠的にマグマが移動して噴火したことを確認。マグマの通り道の摩擦特性によって噴火の仕方が変わることを突き止めました。この仕組みの解明により、次の噴火のパターンの予測につなげられる可能性があります。