課題解決のキーワードは「地域との関係構築」「避難リスクの回避」「女性視点の導入」である。これらを各高専の得意分野を活かし次のように取り組んだ。福島高専:地域との連携の橋渡し役として、沼津高専:セルベース最適津波避難モデルを提示することで、避難リスクの最小化の知見を提供する。石川高専:まちなかハザード標識を横展開することで、福井高専:福井市での女性の防災意識を調査を活かし、四倉地区の役員6名および四倉支所の職員2名へのヒアリング調査から津波避難上の課題を抽出し、これらの解決に向けては5高専で協働するという私たちの強みを活かすべく『複数の課題には各高専の得意分野で対応する』という考えのもとに挑んだ。福島高専によるアンケートから課題をさらに深堀りすることを狙った他、得られた個々の課題には次の通り対応することとした。・自動車による避難が必須であるが、渋滞問題が生じる。・河川の逆流により避難時に使用できない可能性の橋がある。←ハザード標識(石川)、シミュレーション(沼津)・指導者の多くが男性であり女性や子ども視点が不足している。←男女共同参画による防災訓練の提言(福井)アイデアを出す段階までは順調であったと考えるが、その後の取り組みに関する説明会時にて「提案が多すぎて何がなんだか分からない」との声が挙がり、地域住民の皆さまに対する配慮が欠けていたことに気付かされた。結果、規模を縮小することとし、今回は福島高専のアンケートおよび沼津高専のシミュレーションのみの実施とした。ただ、これらも本コンテストの検証期間内には結論を出すまでに至らなかった。今回のような対象が1800世帯というだけでなく提案者も多く、たくさんの人たちを巻き込む壮大な企画は短期間で実施するものではなく、一つひとつ段階を踏んでいくものであったことを実感した。以上のように、ステークホルダーとの対話からは、コミュニケーションの重要性と対象者に対する配慮の他、企画の趣旨に沿う提案の必要性を学ぶことができたと分析する。なお、アンケートとシミュレーションの分析はこの後必ず実施することをここに付記する。活動全体を通じて、地域住民の皆さまや四倉支所の皆さまに対する説明不足や配慮不足があったことを痛感し、取り組みの趣旨を少しでもご理解いただくために、いわき市総合避難訓練後にお時間をとっていただき住民説明会を実施した。丁寧な説明を心掛けたことで一定のご理解が得られ、説明を聞いたいただいた方からは暖かい言葉や励ましの言葉を頂戴した。さらに今後のアンケート結果の分析やシミュレーションから得られた知見を報告する機会を3月にいただくことができ、次に繋がった。最後に沼津高専の視点を述べると、本活動が成立した要因の一つには、福島高専の地域との関わり方の知見が転用できたこと,すなわちナレッジトランスファーによるものといえる。今後は私たちが行っているシミュレーションの結果から得られる知見を他高専が活用して成果を得ること,すなわち「ナレッジトランスファーが社会実装の可能性を高める」を仮説として提言しておく。2021年度に「高専間防災ネットワーク」のアイデア構想を掲げてから4年目、ついにその実現に至った。今回、福島県いわき市四倉地区における津波避難上の課題(リスク回避,女性視点不足等)をネットワーク内で共有し、検討した結果、5高専の協働にてその課題を解決することになった。福島高専がこれまでに築いてきた地域との関係を活かし、沼津高専は津波避難リスクの最小化シミュレーションを、石川高専は避難経路をQRコードで示すハザード標識の実装を、福井高専は男女共同参画による避難訓練の提言を行い、これらの活動を俯瞰するオブザーバーとして奈良高専が参加する。ナレッジトランスファーが起き新規の解決法が生み出されたか?!山﨑碧海・制御情報工学科(沼津)、内田真菜・制御情報工学科(沼津)、小林楓叶・制御情報工学科(沼津)、谷口葵泉・物質工学科(沼津)、遠藤快・制御情報工学科(沼津)、沖夏里武・制御情報工学科(沼津)、小宮山敦大・制御情報工学科(沼津)、佐藤大夢・都市システム工学科(福島)、塩見慎太郎・都市システム工学科(福島)、高橋明李・都市システム工学科(福島)、根本のぞみ・都市システム工学科(福島)、馬場未來・都市システム工学科(福島)、中出咲良・環境都市工学科(福井)、大松心博・環境都市工学科(石川)、北出莉穂・環境都市工学科(石川)、村田葉生・環境都市工学科(石川)アンケートの実施、集計と分析を担当する。避難所までの最短経路をデジタル化して提示する。⇒今回は断念,今後の検討男女共同参画の防災の在り方を提言する。⇒集計作業中,分析は今後⇒シミュレーション中⇒今回は断念,今後の検討これらを基点として11月16日に実施されたいわき市総合防災避難訓練(四倉地区)に参加し、避難経路に関するアンケート調査を実施した他、「KOSENPENTAGON情報交換会」を開催し、取組みについての反省的検討および今後のアイデア検証プロセスをチーム内で確認した。なお、アンケートやシミュレーションの地域住民へのフィードバックは3月に実施予定である。←シミュレーション(沼津)10アイデア検証報告資料提案者1.アイデア検証のプロセス2.ステークホルダー・インタビューの分析3.社会実装に向けた取り組み概要沼津高専奈良高専石川高専福井高専福島高専沼津高専、福島高専、石川高専、福井高専、奈良高専高専間防災ネットワークによるナレッジトランスファー避難訓練
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