防災科学技術研究所 平成30年度成果発表会
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 地震ハザードステーションJ-SHIS (Japan Seismic Hazard Information Station) は、地震防災に資することを目的として、日本全国の「地震ハザードの共通情報基盤」として活用されることを目指して作られたWebサービスである(http://www.j-shis.bosai.go.jp)。 1.J-SHIS の構成J-SHIS は、地震動予測地図の閲覧および地図作成に用いられたデータの公開システムである J-SHIS Map の他に、ポータルサイトの J-SHIS Portal、アプリケーション開発者向けのサービスである J-SHISWeb API、試験的なコンテンツを紹介するJ-SHIS Labs などで構成されている。J-SHIS の情報量は膨大で、専門家向けの機能も多い。そのため、地震や地震ハザードに関する基礎知識や J-SHIS の使用法などを J-SHIS Portal で提供している。 J-SHIS Map のトップページJ-SHIS Portal のトップページ2.J-SHIS Map での地図表示機能J-SHIS Map の情報は、8つのタブにまとめられており、タブを切り替えることでそれぞれの地図を表示させることができる。以下、それぞれのタブの概要を示す。 2.1 確率論的地震動予測地図  今後30年以内に震度5弱、5強、6弱、6強以上の揺れに見舞われる確率の分布図や今後50年以内に超過確率2%、5%、10%、39%に相当する震度や工学的基盤での最大速度などの分布図を表示させることができる。 30年震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図 50年超過確率2%に相当する震度の分布図  地図を拡大してメッシュを特定し、「ハザードカーブと影響度」や「地震ハザードカルテ」(3参照)を表示させたり、影響度の高い想定地震のリンクから震度分布を表示させることができる(2.4, 2.5参照)。 ハザードカーブと影響度の表示例(北海道 厚真町役場を含むメッシュ)  全ての地震を考慮して表示させる以外に、地震カテゴリー別(2.3参照)にも表示させることができる。 2.2 長期間平均ハザード  再現期間500年、1000年、5000年、1万年、5万年、10万年に相当する計測震度を地図上に表示している。  再現期間1万年相当の計測震度の分布図     再現期間10万年相当の計測震度の分布図  この地図は東日本大震災以降に追加されたもので、非常に長期間の確率論的地震動予測地図を作成し、これを長期間の平均像としての地図と位置づけることにより、低頻度の地震による地震動ハザードがより捉えられやすくなることを示した。 2.3 地震カテゴリー別地図  確率論的地震動予測地図では、考慮している全ての地震をカテゴリーⅠ、Ⅱ、Ⅲの3つのタイプに分類している。 カテゴリーⅠは「海溝型地震のうち震源断層を特定できる地震」、カテゴリーⅡは「海溝型地震のうち震源断層を特定しにくい地震」、カテゴリーⅢは「活断層など陸域と海域の浅い地震」である。地震カテゴリー別地図では、各カテゴリーごとに震度5弱、5強、6弱、6強以上の揺れに見舞われる確率を四分位で表示している。  また、各メッシュでどのタイプの地震の影響が一番大きいかを示すために影響度地図を表示させることができる。 カテゴリⅠカテゴリⅡカテゴリーⅢ 影響度地図  これらの地図により、ある地域でどのタイプの地震に備えるべきかを把握することができる。 2.4 条件付超過確率地図  断層を1つ指定し、その断層で想定した地震が発生した場合に、震度5弱、5強、6弱、6強以上の揺れに見舞われる確率の分布図を表示する。また、想定した地震が発生した場合に予測される震度の平均値の分布を示した計測震度の期待値の地図も表示できる。 震度6弱以上の揺れに見舞われる条件付超過確率の分布図計測震度の期待値の分布図 条件付超過確率地図の表示例(石狩低地東縁断層帯主部) 2.5 想定地震地図  断層を1つ指定し、その断層で想定した地震が発生した場合の揺れの大きさを地図上に表示する。地図を拡大し、メッシュを特定すると、そのメッシュの工学的基盤での速度波形を表示させることができる。 計測震度の分布図速度波形の表示 想定地震地図の表示例(石狩低地東縁断層帯主部) 2.6 表層地盤  微地形区分、30m平均S波速度、表層地盤増幅率の3種類の地図を表示させることができる。 微地形区分の地図の表示例表層地盤増幅率の地図の表示例  微地形区分は、日本全国の地形・地盤を統一的な手法により約250mメッシュ区画で分類したもの。  30m平均S波速度は、微地形区分から算出した、地表から深さ30mまでの平均S波速度(AVS30)の分布を示したもの。  表層地盤増幅率は、AVS30から算出される地盤増幅率(最大速度増幅率)の分布を示したもの。 2.7 深部地盤  強震動予測のために作成した地震基盤から工学的基盤に至るまでの全国の三次元深部地盤モデルを層ごとに境界上面深さ、または標高で地図上に表示させることができる。また、地図を拡大してメッシュを特定した場合は、そのメッシュに関する深部地盤構造を表示させることができる。   地震基盤面深さの分布図の表示例特定メッシュでの深部地盤構造表示例 2.8 被災人口  条件付超過確率地図や想定地震地図のデータと人口データを組み合わせ、断層を1つ指定し、その断層で想定した地震が発生した場合に、ある強さ以上の揺れに曝される人口(震度曝露人口)の分布を表示する。また、関連する統計情報の表示させることができる。 被災人口の表示例(石狩低地東縁断層帯主部) 3.J-SHIS Web API を用いたアプリ開発J-SHIS の地震ハザード情報を利用したWebページの作成や、携帯端末のアプリケーション開発支援のためにJ-SHIS Web API を提供し、地震ハザード情報を気軽に利用できる環境の構築を進めている。 地震ハザードカルテJ-SHISの携帯端末用アプリケーションJ-SHIS Web API の利用例4.J-SHIS LabsJ-SHIS Labs では、防災科学技術研究所が試験的に作成したコンテンツの紹介を行っている。液状化履歴地図 5.その他の機能 防災科学技術研究所が作成した地すべり地形分布図データベースをJ-SHISに統合し、J-SHIS Map 上での表示等が可能である。 地すべり地形分布図のJ-SHIS Map上での表示例地震ハザードステーション社会防災システム研究部門2019.02.22 平成30年度 成果発表会

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