令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図1:本研究の枠組み図2:受容力の分析結果あるいはどの程度の変動で衰退するかを表現できる数理モデルを構築した。そして、都市の特徴(産業構造・生産力、居住環境等)を表すパラメータの変化に伴い、都市が許容可能な変動の大きさが変化する様子を分析することで、都市の「受容力」(どの程度の変動まで回復可能かという意味でのレジリエンス)の構造を明らかにしてきた。こうした分析結果を蓄積することで、都市の体質改善(特性のコントロール)、減災対策、事後対応のあり方の検討が可能になることが期待される。Point■数理モデルを用いたメカニズムの解明■都市システムのレジリエンスに影響を与える要因の分析■都市の特徴に応じた対策と検討する枠組みの構築概要我が国では南海トラフ巨大地震等、今後も大規模災害の発生が懸念される。安定して存続していた都市が、災害による人口流出や産業への被害を契機に衰退傾向に陥る等、望ましくない状態に陥る可能性も指摘されている。被災した都市が潜在的に陥る可能性のある状態のパターンとそのメカニズムが解明されれ、都市の特性に応じて、被災後に望ましい状態を回復するための事前対策や備えておくべき復興政策の方向性を明らかにできよう。上記のパターンやメカニズムを解明するためには、被災した都市の状態の動的変化を記述可能な数理モデル(以下、回復モデル)を用いる方法が考えられる。しかし、従来の回復モデルは、回復速度を高める対策、または、被害による機会損失を最小化する対策の検討が主な目的とされており、都市が被災前の状態あるいはトレンドに戻ることを前提としていた。そのため、都市が衰退傾向に陥るメカニズムを内包しておらず、従来の回復モデルを上記のパターンやメカニズムの解明には適用できなかった。以上を踏まえ、本研究では人口と資本を変数として都市の状態変化を記述する微分方程式を用いて、災害による人口および資本の変動に対して、どの程度の変動まで都市は回復可能か、今後の展望・方向性以上のモデルは災害による人口や資本の変動を外生的に与えた上で、その後の長期的な都市の状態変化を記述するものであり、災害被害の影響を受けて人口・資本が変動していく回復過程の様子を十分には表現できていない。今後は住宅や都市施設、生産設備等への物的被害やそれに伴う都市機能・雇用・産業の低迷が、どの程度人口や企業の変動を引き起こすのか、そして、その変動が長期的に都市全体の回復過程にどのような影響を与えるのかという点に焦点を当て、時間軸における動的な状態変化をより詳細に表現可能な数理モデルの構築を目指す。数理モデルを用いた都市システムのレジリエンスの構造の解明災害過程研究部門塩崎由人

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