令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会2015.6.28 in Pragueこれらの非地震性津波はその発生場所が特定されていません.このような津波に備えるため,その最も基礎となる沿岸の地形データを世界中の任意の地点で作成するシステムの開発を進めています.また,オープンソースの津波計算プログラムであるJAGURSと合わせることでどこでも津波計算が可能となり,津波防災力の向上に資する研究開発を進めています.我が国は四方を海に囲まれ海の恵みを受けつつも,津波による被害にも繰り返し見舞われてきました.津波の発生と伝播や沿岸の構造物等に与える影響などを対象に学際的な研究が活発に行われ,“TSUNAMI”は世界標準語として用いられています.今後は,非地震性津波も含めた総合的な“TSUNAMI”研究によって想定外を無くすための研究活動を進めて行きます.地震津波防災研究部門近貞(山本)直孝概要津波.それは一般に,海域で発生した地震によって生じた海底の隆起や沈降によってその上の海水が上下に変位することで生じ(発生),重力波として伝わり(伝播),沿岸に近付くに従い波高が増大し陸域に浸水(遡上)することで被害をもたらす自然災害として知られています.このメカニズムは,昭和8年に発生した昭和三陸地震による甚大な津波被害を受けて,地震津波に対する科学的な調査研究が進んだことにより明らかとなりました.一方で,津波とは湾(津)で大きく波高が増大する波の総称であり,地震を伴わないものも多く知られています(非地震性津波).例えば,晴天で凪いでいる海に突如として津波が発生する現象が世界中の諸地域で確認されており,これは一般的に気象津波(meteotsunami)と定義されていますが,各地方で様々な呼称があり,日本では九州地方で古くからあびきとして知られています.その他に,『島原大変肥後迷惑』として知られている雲仙岳の眉山の山体崩壊によって土砂が有明海に貫入することで津波が発生し,対岸の肥後で被害が生じたことも歴史の中では知られています.そして,海底での火山噴火やカルデラの陥没,地すべりでも津波は生じます.さらに,隕石の衝突によっても津波は発生し得ます.今後の展望・方向性海底の地震や地すべりによる津波は,海底地形の変化によって生じるもので,先行研究が多数あります.一方,土石流の流入や気圧変化,隕石衝突による津波は,海面を直接変動させて発生します.これらの発生メカニズムや観測との比較,室内実験はまだまだ不十分で,その事象の発生が予見されても津波を適切に予測する術がなく,調査研究が必要とされています.実現したいこと■想定外をなくしたい■津波防災力を向上させたい■津波の発生・伝播・遡上の仕組みを解き明かしたい謝辞本研究はJSPS科研費JP18K04674,JP19H02409,JP20HP8014,JP21HP8018及び公益財団法人日立財団の倉田奨励金(奨励金No.1400)の助成を受けて実施しています.記して感謝致します.津波は地震で起きる?!

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