令和3年度成果発表会
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MOWLASデータの再解析により、3D構造に基づく長期の震源カタログが整備出来ます。地震活動は、地震の発生場所によって異なる特徴を有します。この特徴を確実に捉え、地震活動の変化を客観的に可視化することを目指します。2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図防災科研が気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の定例会合に提出した資料の例。右上の断面図等から、この地震がプレート境界で発生した地震であることが分かる。を迅速かつ正確に判断しなくてはなりません。地震の発生場所によって、懸念される次の巨大地震発生の影響も異なりますし、その後に展開される情報の種類や自治体が取るべき防災行動が異なってくるためです。しかし、これまで、この判断は簡単ではありませんでした。西南日本の下には、南海トラフから列島に向かって沈み込むフィリピン海プレートが存在します。このフィリピン界プレートの存在を無視して震源位置や地震のメカニズム(発震機構)を推定すると、小さくない”誤差”が生じます。この誤差のため、この地域で発生する地震の評価を確定させるまでに数週間以上の時間を必要とすることがありました。防災科研のプロジェクト研究「地震・津波予測技術の戦略的高度化研究」では、MOWLASデータ等の解析を通じ、沈み込むプレートを考慮した詳細な三次元(3D)地下構造の解明を進めるとともに、そのような地下構造モデルを用いた震源位置や発震機構(セントロイド・モーメント・テンソル;CMT)を求める方法の研究のプレートの境界で発生したのか、否か開発を行ってきました。さらに、東京大学地震研究所とともに、3D地下構造モデルを用いたCMT解析(3DCMT)の自動処理化、高速化を実現しました。CMT解析は、マグニチュード(M)や震源深さを精度良く決定出来る一方、対象がM4程度以上の地震に限定されます。文部科学省委託研究「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」では、より小さい地震を含めた活動状況の迅速な把握を目指し、3D地下構造モデルを用いた自動震源決定システムの構築も行っています。これらのシステムにより、タイムリーな情報発信が可能となるだけでなく、高精度な震源情報に基づく地震活動推移研究の発展に繋げていきます。地震津波防災研究部門/地震津波火山ネットワークセンター汐見勝彦今後の展望・方向性「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」では、海洋研究開発機構が南海トラフ周辺の海域の地下構造モデルの高精度化を進めています。本プロジェクトでは、この新たなモデルを活用し、震源決定の更なる精度向上を目指しています。Point■南海トラフの正確な地震活動を即座に「知る」■カギはリアルタイムの観測データ+詳細な地下構造■長期カタログは地震活動評価の基礎データとして重要概要近い将来に大きな地震の発生が危惧されている南海トラフ近傍で一定規模以上の地震が発生した場合、気象庁は、地震発生から2時間程度の内に「南海トラフ地震臨時情報」を発表することとなっています。地震を評価するためには、その地震が、南海トラフ巨大地震と同じ沈み込むフィリピン海プレートと陸側南海トラフの地震活動評価に向けて

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