令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会地下の温度構造に与える気候変動による地表気温の変化と地下水流動の影響に関する模式図に丁寧に調べることで、日本列島全体の地震活動の長期的な評価の一貫として、発生する地震の規模の推定、地震の発生様式の解明、更に近年発展が著しい地殻活動に関するシミュレーションの精緻化に必要な物理パラメータを提供する、などの成果が期待できます。また副産物として地表付近の地下温度分布から日本列島の古気候の再現に貢献できる可能性もあります。極めて感度の高い地震計で、人が感じることのできない小さな地震(微小地震)も含めて、日本列島の地震活動を観測するもので、医療器具に例えれば“聴診器”とも言えます。本研究では、この本来の聴診器としての使い方ではなく、観測用の井戸を、地下の温度勾配を測る“体温計”として二次的な活用をはかりました。気候変動と地下水の影響を取り除き、地下20km付近までの地下の温度を精度よく推定しています。Point■気候変動の履歴が地震観測用井戸の温度分布に記録されている■地下水の循環も井戸の温度分布に影響を与えている■両者の影響を除くと地震と相関する地下温度構造が見えてくる概要地震が発生する“深さ”の下限については地下の温度と密接な関係があると推定されています。地下10kmとも15kmとも言われる地震発生場所の温度を直接測定することは極めて難しく、地表面に掘削した井戸の温度勾配から地下の温度を推定するしかありません。しかし、この地表面付近の温度の分布は変化に富み、深くなるにつれて単調に上昇していくものでもありません。日本では過去100年の間に郊外で2℃弱、大都市圏では3℃以上、年間平均気温が上昇していますが、こうした気候変動による地表の気温の変化は地下100m程度までの地層の温度分布の変化として記録されています。また、数十万年にわたる氷河期ともなればその影響はさらに大きく、地下1000m以上の深さまで温度分布の変化として記録されています。地下水も地下の温度に大きな影響を与えています。火山周辺地域では地下で熱せられた水の上昇による影響が見られます。また、平野部では地下水流動系が広く存在し、地下水上昇域では温度勾配が大きく,地下水下降域では温度勾配が小さいという複雑な地下温度勾配の分布が見られます。防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net)は、今後の展望・方向性日本列島の地下の温度構造は複雑です。紀伊半島や四国といった非火山地域において高温の温泉が存在するなどの熱異常が見られます。湯の峰温泉、道後温泉、有馬温泉などがその例です。一方で関東地方や中国地方等の温度勾配が小さい地域では非常に深い場所で地震が起きるなどの特徴があります。このような地下の温度構造と地殻内地震発生層との関係を地域毎日本列島の体温を計測する~気候変動と地下水と地下温度と地震~地震津波火山ネットワークセンター松本拓己

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