令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図1本震直前の比較的均質な模擬断層面上のせん断応力と前震の時空間分布。ました。一方、比較的不均質な断層ではプレスリップは観察されず、前震の数と規模が加速度的に増加して本震に至る「カスケードアップ型」の地震の始まりが確認されました。また、それぞれの前震の規模別頻度を調べたところ、地震活動の統計的性質を示すb値が比較的均質な断層において有意に大きいことが分かりました。これらの結果は、断層面の均質性が地震の始まり方や前震活動を制御しており、前震の統計的性質を調べることで将来発生する大地震の始まり方を予測できる可能性を示唆しています。本研究は英国科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。い条件下で地震の始まりを再現し、発生する現象を詳細に調査するには、さらに大きな模擬断層面での実験が必要です。現在、それを可能にするため現行の3倍以上の規模となる超大型岩石摩擦実験の実現に向け準備を進めているところです。地震津波防災研究部門山下太概要大地震がいつ・どのように始まるかを解明することは、基礎研究の観点のみならず、防災・減災の観点からも極めて重要です。地震の始まりについて、世界中の研究者から様々なモデルが提案されていますが、中でも、断層の一部で始まったゆっくりとしたすべり(いわゆるプレスリップ)が加速しつつ断層全体に広がって本震に至るという「プレスリップ型」と、小さな地震がより大きな地震を次々と誘発して本震に至るという「カスケードアップ型」の二つのモデルが代表的です。これら二つのどちらがより現実に即しているかは今でも明らかとなっていないため、今回その解明を目的とし、世界的にも珍しいメートル規模の岩石試料を使った摩擦実験を実施しました。そのような大規模な実験を実現するため、防災科研つくば本所にある大型振動台を動力として利用しています。まず、振動台上に長さ2mの岩石試料を設置し、その上に長さ1.5mの試料を積み重ねます。上側の試料は振動台の外側から伸ばしたバーによって動かないよう支え、下側の試料を振動台と共に動かすことで接触面(模擬断層面)をすべらせます。本研究では模擬断層面の均質性を制御して二つの実験を実施し、その結果を比較しました。比較的均質な断層での実験では「プレスリップ型」の地震の始まりが観察され、本震が発生する直前の加速したプレスリップの通過に伴って前震が発生していることが確認され今後の展望・方向性現実の自然断層は本研究で再現した二種類の状態のどちらか一方ではなくその中間の状態にあり、断層ごとに表れる特性の強さが異なっていると予想されます。また、一つの断層面内でも場所ごとに特性が異なる可能性があります。そのような、より現実に近Point■大型岩石摩擦実験で代表的な二種類の地震の始まり方を再現■断層面の均質性が前震や地震の始まりを制御していることを発見■微小地震活動から大地震がどのように始まるか予測できる可能性大型実験で再現した前震活動とその特徴

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