令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会地中のほぼ同じ経路を通るため、・揺れの増幅(大きくなり方)・継続時間(揺れている時間)・卓越する周期(小刻みな揺れか、ゆらゆらした揺れか)の特徴は、M5とM7の地震でほぼ同じと見なせる図:(上)シミュレーション方法、(下)△の294地点での結果を内挿した最大加速度分布シミュレーション波形を求める地点M7の地震の断層を、M5の地震の断層の大きさで分割し、すべりが東から西の浅い領域に向かう時間差を踏まえて、M5の地震の波形を分割個数分足し合わせ×がM5の地震の震源位置で、長方形1つがその断層の大きさ今回はMeSO-netデータの活用により、首都圏の多数の地点における波形を推定できました。波形データには揺れの様々な特徴が含まれており、揺れによる被害を考える上で重要です。今年度実施されるE-ディフェンスでの室内空間を対象とした震動台実験において、実験対象の建物が立地する代表的な地域に対して今回シミュレーションした波形が利用される予定です。図にシミュレーション結果による最大加速度の分布を示します。暖色で示す揺れの大きい領域が東京都と神奈川県の境界の付近から東京都の西部にかけてと、東京都の東部から埼玉県東部にかけて広がることが分かります。この特徴は断層でのすべりが東から始まって西側に進んだという仮定と、これらの領域で地下構造による揺れが大きくなる効果が相まって現れたと考えられます。地震津波火山ネットワークセンター鈴木亘概要首都直下地震は首都圏の大きな脅威の一つであり、その揺れの予測と被害の想定が内閣府や東京都を始めとして広く進められています。関東の地下深くでは南と東から2つのプレートが沈み込み、地表に近づくと岩盤の上に厚い所では3km以上も堆積層が載る複雑な構造をしています。首都直下地震の揺れの推定には、地震波がそのような地中を通ることで揺れが大きくなったり、揺れる時間が長くなったりする影響を適切に踏まえる必要があります。防災科研は首都圏の約300か所に約2~10km間隔の地震計のネットワーク(MeSO-net)を展開し、地下20mで揺れのデータを常時観測しています。東京湾真下のフィリピン海プレートの内部深さ50km付近で、2015年9月12日にマグニチュード(M)5の地震が発生し、MeSO-netにより多くの地点での揺れの波形データが得られました。実際に観測されたデータは地下構造の影響を受けた揺れの波形となっています。図のように断層の広がりと断層すべり(食い違い)の量を首都直下地震の大きさとなるようにM5の地震の波形を補正して足し合わせることで、近い将来の発生が懸念されるフィリピン海プレート内部のM7クラスの大地震による揺れの波形をシミュレーションしました。今後の展望・方向性観測データを足し合わせるのではなく、地中の複雑な構造を把握して地震の揺れの波形をシミュレーションする方法もありますが、特に周期の短い小刻みな揺れまで正確に再現することはいまだにハードルが高いです。そのため大地震による揺れを広く面的に推定する場合には、揺れの波形ではなく震度や最大加速度といった揺れの特徴を単純化した指標を対象にすることが多いです。Point■実際に観測された揺れで未経験の大地震の揺れの波形を推定■MeSO-netの活用で首都圏の多数の地点での揺れを把握■シミュレーション波形はE-ディフェンスの震動台実験で利用予定中地震から首都直下地震の揺れを作る

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