令和3年度成果発表会
29/158

2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会青:ルーチン緑:再決定初期震源:ルーチン図今回の手法を用いた2015年1年間の震源決定結果ルーチン処理結果と今回の計算結果を比較してみると、おおむね一致しているが、詳細に見てみると、ルーチン処理では南の海域下でよく決まらないために深さが固定されてしまった地震が散見されるが、今回の結果ではばらつきは大きいものの位置は決められている。また、東海・中部地方下の沈み込むフィリピン海プレートに対応する地震分布をみると、今回の結果の方が浅く決まっている。速度不均質構造の影響が表れているようである。地震津波火山ネットワークセンター関口渉次概要地震活動をいち早く把握することはその後のいろいろな対応のために重要なことである。地震の発生位置、時刻を決定することは地震活動把握の中でもっとも基本的なことである。そこで今回は、開発した迅速かつ正確に震源を決定する手法について紹介する。基本的には、時間のかかる走時計算を事前に行い、震源決定の際にはそれを呼び出すことによって処理の迅速化を図ったものである。また事前に走時計算を行うので、そこに十分時間をかけることができる。地震波速度構造の3次元不均質構造は、決定精度の劣化の要因のひとつではあるがその効果を入れた走時計算には時間がかかる。今回、事前に実施することにより取り入れることが可能となり、より精度の高い震源決定が可能となった。今回の走時計算には最短経路法を用いた。迅速な計算方法としてpseudo-bending methodがしばしば用いられているが、局所解に落ちてしまう可能性があった。最短経路法はその心配がない。その代わりに計算時間はpseudo-bending methodよりはるかにかかる。今回は計算時間よりも最短経路法のメリットを重視してこの方法を用いることにした。走時計算を各観測点から対象領域の全格子点まで実施する。格子点での値をspline補間する。走時データは計算機のメモリに読み込んでから震源決定を行う。この手法を用いて震源決定をした例を図に示す。3次元速度構造は松原他のALJ2019モデルである。1年のデータ(およそ9,000イベント)の震源決定処理に要した計算時間は4~6秒と期待通り非常に速かった。一方で、事前の走時計算の所要時間は全部で、30日17時間(並列処理しない場合)であった。走時データを収めるファイル(メモリ)容量は1.5GBとなった。ちなみにpseudo-bending methodの場合は38時間足らずであった。Point■地震活動の迅速な把握はその後の対応のために重要■震源決定はその中で基本中の基本■今回はそのために開発した迅速な震源決定手法について今後の展望・方向性今回の対象領域はあるプロジェクトにより要請されたことにより設定したものであるが、今後も要請があれば、ほかの速度構造、ほかの領域についても同様に計算していく予定である。より広範囲に適用するにはさらに走時の計算時間がかかるので、最短経路法のより効率的な計算手法の開発が必要であろう。事前走時計算による迅速な震源決定

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る