令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図(a)防災科研に保存されているアナログ地震波形記録のファイルと記録紙の例.(b)スロー地震の一種である微動が確認された期間の記録紙をスキャンした画像の例.(c)デジタル化したデータ(青線および紫線)を元画像の上に表示した図.(b)の橙線枠内を拡大.https://www.bosai.go.jp/information/news/pdf/k_news214.pdfただし,波形の線同士が交差する大きな揺れがある場合に,うまくデジタイズされない問題が残っている.また,アナログ記録では時間を示すタイムマークが1秒毎に入っているが,これがデジタイズ後のデータに残る点も課題である.これらは活動検出や位置推定に悪影響を及ぼすため,さらなる改良が必要である.一方,数値シミュレーション研究からは,大地震の発生サイクルの後半に,スロー地震発生の間隔が短くなるなどの予測結果が得られている.紙記録の解析を併せた長期のスロー地震活動のデータから,地震とスロー地震の数値シミュレーションのモデルの妥当性を検証するとともに,モデルの高精度化を進め,予測能力の向上に貢献したい.※本内容については,「防災科研ニュースNo.214」にも解説が掲載(下記URL)されています.こちらもご覧ください.地震津波火山ネットワークセンター松澤孝紀概要スロー地震の一つである微動は,2000年秋から運用を開始したHi-netの連続データの記録を丹念に観察する中から見つかった.しかし,Hi-net整備以前は連続データをデジタル記録として保存することは一般的でなく,こうした時代のスロー地震活動,とくに微動活動は未解明である.防災科研は1970年代終わり頃より,関東東海地殻活動観測網を運用しており,ペンレコーダーで記録された上下動の地震計データが残されている(図a).目視の解析から微動によると考えられる波形を記録紙上に確認できたことから,我々はこの記録を活用し,過去のスロー地震活動を明らかにする研究を開始した.解析にあたっては波形データをコンピューター上で扱う必要があるため,記録紙をスキャンして画像ファイルとした上で,これを自動でデジタル波形データ化(デジタイズ)する研究を進めている.微動が確認された期間の波形(図b)をデジタイズした結果を図cに示す.画像の上にデジタイズ結果を上書きするとほぼ元波形と合致していることが確認でき,ペン書きの地震計の記録を,うまくデジタルデータに変換できている.このデータの周波数特性を確認したところ,2-6Hzの帯域に卓越するシグナルがみられ,現在の微動と同様な特徴となっている.今後の展望・方向性現在スロー地震データの解析に用いられる手法を,このデータに適用することで,現在に近い精度で過去のスロー地震活動の情報が得られると期待される.現在のスロー地震(微動)の情報は防災科研Hi-netの運用開始以降の約20年のものであるが,過去のアナログ記録のデータを活用することが可能となれば,カバーされる期間はほぼ倍となる.Point■記録紙上の地震波形の中に,スロー地震(微動)を確認■記録紙をスキャンした画像を用い,自動でデジタル波形データ化■現在の微動の地震波形と同様な周波数的特徴を確認地震計の紙記録から探るスロー地震

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