令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会いずれの試料も1mm程度より細かな粒子に非常に乏しいですが、細かな粒子は相対的に気泡に水が浸入しやすいため、漂流中に沈降除去されたためと考えられます。他の火山噴出物に比べて粗粒で淘汰が良い傾向にあります(図6B)。調査船を使用した調査を行なうことにより、周辺海底に堆積した噴出物と比較し浮遊・沈降の分配の程度が推定できると期待されます。上記の調査・解析を通じて物質科学の観点から漂流軽石現象の全体像を明らかにすることで、今後の被害予測・対策技術の発展に貢献したいと思います。火山防災研究部門長井雅史概要小笠原諸島の福徳岡ノ場火山の8月13日~15日の大規模な噴火で発生した漂流軽石が、まず黒潮反流によって西進し南西諸島の広い範囲に漂着を開始し、その後黒潮に乗ったものが伊豆諸島や本州南岸にも漂着しています。各地で漁業や海運、観光などの広い範囲に影響が及んでいます。大規模な漂流(漂着)は噴出物の運搬・堆積機構としては観察頻度が少なく実態が不明瞭な現象です。今回は沖縄群島(常葉大学との共同調査)や伊豆諸島などで行った調査の結果をご紹介します。漂着した軽石堆積物の産状は、入江などに吹き寄せられている場合では水際に緩やかな堤防状にのし上げて堆積しており、厚い浮遊軽石層が干潮時にほぼそのまま沈下して干潟に残留した状態もみられます(図1)。外洋に面した浜などでは駆け上った波の形を残したローブ状・指状の堆積物が多いようです(図2)。各地の軽石はほぼ同様な化学組成を示し(図3)、漂着地域による違いはほぼないとみられます。軽石内部には細かな気泡が多数あり(図4)、水が浸入しにくいため浮力を維持できたと考えられます。給源に近いものの方が角ばった形状をしており、遠方ほど円磨されて丸みを帯びています(図5)。漂着軽石の集団としての粒度特性をみると、粒度分布は(図6A)は漂流距離ではほぼ変わらず、むしろ産状によって若干異なっている可能性があります。今後の展望・方向性各地の試料について円磨度などの粒子形状パラメータ測定をすすめ、衛星画像等から得られる漂流量の推定とあわせて、漂流中の軽石の破砕・磨滅の過程を明らかにする必要があります。また、火口付近に形成された新島は既にほぼ消滅しているので火口近傍噴出物の採取は困難ですが、他機関と共同でPoint■噴出物の解析から、噴火の特徴や被害状況の早期把握を目指す■南西諸島や伊豆諸島などに漂着した軽石の堆積状態を調査■軽石の組成・形状の特徴やそれらの距離変化把握の為に分析実施福徳岡ノ場火山の漂着軽石の調査

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