令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会平年の10月の総降水量に対する令和元年東日本台風による総降水量の比と海面水温偏差および水蒸気の流れの様子。太平洋及び東北・北海道東方沖で海洋熱波が発生していた。2018年台風第12号と類似し経路の過去の台風(1983年台風第6号)の雨量分布。規模は異なるが同様な地域で雨量が多い様子が見られる。女島(長崎県五島市)五島列島の南南西70km観測を実施している無人島の位置と2020年7月上旬の雨と水蒸気フラックスの様子。2018年台風12号1983年台風6号洋沿岸域に大雨をもたらした一因となっていたことを,数値実験から明らかにした。Point■過去の気象災害情報を収集・利用する■現在の気象予測の不確実性を理解する■将来の気象災害の予測情報につなげる概要最新の気象モデルによる台風の進路予測の精度は年々向上している。しかし、数日先の雨量や災害自体を直接予測することは困難である。過去の事例を活用して気象予測の結果から想定される状況も情報として提供できれば、気象災害への備えに役立つと考えられる。そこで、過去の台風の災害情報を集約する台風災害データベースの構築を進めるとともに,気象モデルで予想された台風経路と類似した過去の台風における雨量情報に加えて床上・床下浸水件数や一部損壊件数などの被害情報も合わせてを提供する試みを実施している。一方、気象予測の精度は着実に進展しているが、予測される雨量情報等には依然として不確実性(誤差)が存在する。周辺を海で囲まれた日本において、集中豪雨の予測のリードタイムを延ばす上では、海上での水蒸気の把握が重要となるが、海面水温の不確実性が水蒸気フラックスや豪雨にどのような影響を及ぼすのかをまず把握する必要がある。そこで、より一層の予測精度向上を通じた災害軽減に資するため,東シナ海にある絶海の無人島で水蒸気輸送量の把握のための観測研究を進めている。また,近年これまで経験したことがないような甚大な災害をもたらす集中豪雨・豪雪等が多発している。将来の豪雨などの発生頻度や強さ、発生地域などの変化に関する知見を得るための研究も合わせて進めている。日本の短時間豪雨は,気温上昇から予想される値を上回る割合で増加する傾向を示しており,その一因として日本周辺の海面水温の上昇が考えられる。日本周辺の海面水温は,長期的な海面水温の上昇率は全球平均と比べ大きい。このような長期的な水温の上昇に伴い,近年,海洋熱波と呼ばれる短期の異常な高海水温現象が頻発している。この海洋熱波が,令和元年東日本台風に伴う東北地方の太平今後の展望・方向性台風以外の比較的短時間の集中豪雨や低気圧などの気象現象に起因する様々な災害情報についてもデータ整備を行い、様々なデータが蓄積していけば、他の気象災害に対して同様な情報提供が可能になることが期待される。また,日本周辺の海面水温が、豪雨や豪雪などの極端気象現象や近年増加傾向にある日本の短時間豪雨頻度等へ与える影響についての理解が進めば、将来の豪雨などの発生頻度や強さ、発生地域などの変化に関する有益な知見を与えるとともに、それらの結果を踏まえた想定される災害情報の向上にもつながることが期待される。水・土砂防災研究部門飯塚聡気象災害の予測を目指した研究

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