令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会本研究は、当研究所とハイドロ総合技術研究所との共同研究の成果です。また,本研究の一部は,科研費・基盤研究(C) (一般)(課題番号:20K04069)の補助を受けていることを付記し,感謝の意を表します.名古屋港における可能最大台風による3次元高潮漂流物解析の結果名古屋港湾奥部(a) t=19:20, (b) t=19:40, (c) t=20:00, 名古屋港ガーデンふ頭内,(d)t=19:58,(e)t=20:00,及び,そのCG画像の一例(f)以上より,高潮により海域に流出した漂流物は,水流だけでなく強風の影響を強く受けることや建物の配置・形状を考慮した高解像度の地形モデルにより,漂流物が建物に捕捉されるといった複雑な挙動を表現できることがわかった.建物の配置・形状を考慮することで、局所的な危険箇所を表現できるため,ハザードマップや避難計画の検討に有用な情報となると考えられる。また,これらの解析結果の活用方法の一例として,高潮・漂流物挙動を示すCGを作成した(f).今後,地域の防災対策の検討や防災教育への活用が期待できる.所属名水・土砂防災研究部門氏名下川信也・村上智一概要台風の接近により高潮が発生した場合,沿岸域の浸水により自動車やコンテナ等が漂流しさらに海域へ流出することがある.その場合,漂流物の沈降や航路閉塞により災害からの復旧に時間や費用を要したり,漂流物の衝突による防潮施設の損傷により堤内地が浸水する恐れがある.台風を対象とした漂流物解析では,強風の作用を強く受けるため,津波の場合と異なり,風応力の影響を考慮する必要がある.また,地球温暖化による台風の強大化が危惧されており,台風時の漂流物挙動の把握は防災上重要な課題であると考えられる.そこで,本研究では,地球温暖化を考慮した可能最大級台風を対象として,名古屋港周辺における高潮と漂流物の挙動特性を検討した.本研究では,数値モデルは,港湾空港技術研究所開発の津波シミュレータT-STOCを台風気象場を考慮できるように改良したモデルを用いた.台風気象場は,地球温暖化の気候条件下で想定した50通りの台風の中で名古屋港において最大高潮が発生する気象場を採用した.地形モデルは,国土地理院の航空レーザー測量結果より作成した建物の配置・形状を考慮した高解像度の地形モデルを利用した.漂流物は,名古屋港周辺の自動車集積地に保管された自動車を解析対象とした.漂流物の空間分布を図示する.(a)中の赤線が自動車の初期位置を表している.台風の名古屋港最接近時刻は19時頃で,19時20分には,漂流物(初期位置の北西海域の黒点)の一部が北西側の海域に流出している(a).その後,漂流物は北方向に流され(b),20時頃には多数の漂流物がガーデンふ頭周辺に到達する(c).さらに,漂流物の一部(d, e中の白点)は浸水したガーデン府ふ頭内の名古屋港水族館やショッピングモールJETTYなどの建物に接触して滞留する(d, e).今後の展望・方向性Point■高潮に伴う漂流物の挙動特性を数値解析の面から検証した■漂流物は水流だけでなく強風の影響を強く受けることがわかった■高解像度地形モデルにより漂流物の複雑な挙動を表現できた可能最大級台風による3次元高潮漂流物解析

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