令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会2018年8月27日にさいたま市北区で突風をもたらした積乱雲危険度予測積乱雲が図の左から右に移動しいているとき立ち上がった鉛直渦は積乱雲の脇を通り過ぎるため渦を獲得しづらい積乱雲が図の奥から手前に移動しいているとき立ち上がった鉛直渦は積乱雲の中心へ取り込まれるため渦を獲得しやすい図1aSReHが大きくならない場合図1bSReHが大きくなる場合図2市区町村単位での積乱雲危険度予測の実例竜巻や落雷,ひょう,短時間強雨をもたらす危険な積乱雲はスーパーセルと呼ばれ,メソサイクロンという直径数キロの鉛直にのびる渦を持っている。この渦が危険な積乱雲を早期に見つけるための重要な特徴となる。スーパーセルの渦は水平にのびる渦が傾けられ鉛直にのびる渦になる,ティルティングによってもたらされる。図1のように,地表から雲下層の風が上空に行くにしたがって,同じ向き強くなっている場合,水平にのびる渦ができる。ここに上昇流を持つ積乱雲が発生すると,上昇流によって水平にのびる渦が傾けられ,積乱雲中心付近の側に鉛直にのびる渦が現れる。次に先ほどできた鉛直にのびる渦を積乱雲が獲得できるかどうかを表す指標であるStormRelativeHelicity(SReH)を用いて考える。積乱雲は雲中層の風によって流されるが,雲中図2は埼玉で突風をもたらした積乱雲の監視予測の実例である。検出された危険な積乱雲の1時間先の移動予測を加味した危険度分布となっている。市区町村単位に絞り込んだ積乱雲危険度予測が可能となってきている。層の風が下層の風向きと同じ場合(図1a),渦は積乱雲中心の脇にとどまり,渦を獲得できず,この時SReHの値は大きくならない。積乱雲が下層の風向きと直交する方向へ移動する場合(図1b),渦は積乱雲中心へと取り込まれ渦を獲得しスーパーセルへと発達する。この時,SReHの値は大きくなる。このようにSReHが大きい場合,危険な積乱雲であるスーパーセルが発生しやすくなるため,この指標を監視することで,危険な積乱雲を見つけることができる。SReHの計算には,積乱雲の正確な移動方向と積乱雲の周りの立体的な風の情報が必要となる。防災科研では,レーダー観測による積乱雲追跡手法と数値シミュレーションに基づいた独自の推定手法でこれらのデータを組み合わせて,積乱雲のSReHを計算し,積乱雲危険度の監視・予測を行うシステムを開発している。積乱雲の移動方向の推定手法の精緻化など,まだ実用化に向けた課題が多く残されているので,今後はそれらを一つ一つ解決し,少しでも早く危険な積乱雲を検出し危機管理に携わる各主体に届けられるような仕組みを構築していく。Point■スーパーセルという危険な積乱雲を早期に見つける手法を開発■見つけ出すカギは「メソサイクロン」・「ティルティング」・「SReH」■市区町村単位に絞り込んだ1時間先までの積乱雲危険度予測危険な積乱雲を早く見つけ出せ!~積乱雲危険度監視・予測システムの開発~水・土砂防災研究部門下瀬健一

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