令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会各予報時間における線状降水帯に伴う3時間積算雨量の予測精度.(左)バイアススコア,(右)捕捉率.各スコアは検出された21の線状降水帯イベントに対する平均値で,青シェードは閾値80mm/3hに対するサンプル間のばらつき(±1σ)を表す.過大過小精度高いえます。今後は、この現業予測による検証結果を基礎資料とし、防災科研で開発中の予測システムの精度検証を実施していく予定です。また、防災科研で開発中の予測システムにおいても、前述のブレンディング予測の手法が採用されており、双方の結果を用いて課題を精査することで、より有用な予測情報の提供に貢献できるように取り組んでいきます。図は、2019年と2020年の夏季に九州地方で検出された21の線状降水帯を対象に、3時間積算雨量の予測精度を検証したものです。線状降水帯の検出基準として用いられる80mm/ 3hの閾値(黒四角)に着目すると、バイアススコア(左)では、予報時間の経過とともに予測の過小評価が顕著になる傾向が見られました。捕捉率(右)については、予報2時間目から3時間目にかけてスコアの大幅な低下(約0.5→約0.2)が認められました。従って、これらの結果から、線状降水帯に対する積算雨量の予測可能性の限界は2時間程度であることが示唆されました。水・土砂防災研究部門初塚大輔概要線状降水帯は、数時間にわたり一定の場所に強雨をもたらし、しばしば河川氾濫や土砂災害等を引き起こします。一般的に、ゲリラ雷雨のような局所的・短時間の強雨では、瞬間的な降水の強さ(降水強度)の予測が重要視されますが、現象が持続する線状降水帯では、特に数時間積算した降水量の高精度な予測が防災の観点から重要となります。気象庁が2018年3月より運用を始めている予報プロダクトとして、「速報版降水短時間予報」があります。このプロダクトでは、10分間隔で、6時間先までの1時間降水量を1km解像度で予報しています。高頻度に数時間先までの積算雨量の予測が得られるため、現業予測の中では、線状降水帯の予測に対し最も有用なプロダクトであると考えられます。予測の作成には、ブレンディング予測と呼ばれる、実況補外予測と数値モデルによる予測を合成する手法が採用されています。補外予測とは、過去の雨雲の動きから外挿して予測する方法で、予測前半では非常に有効な方法ですが、後半では精度が大きく低下するため、数値予測に重みが置かれます。今回は、この現業予測を用いて、複数の線状降水帯に対する予測精度の検証を行いました。今後の展望・方向性戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」の一環として、防災科研では線状降水帯に伴う2時間先の積算雨量を高精度に予測するための技術開発を進めています。予測のリードタイムが長いほど事前の避難等災害に備える時間が長くなりますが、本研究で得られた結果は、「2時間先」という時間設定の妥当性を裏付けるものとPoint■現業予測を用いた3時間積算雨量の予測精度■複数の線状降水帯事例を用いた統計的解析■有用な予測は2時間程度が限界であることを示唆現業予測における線状降水帯の予測精度の現状

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