令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図.ブロック塀と生垣の熱画像(左,ε:0.95,2021年9月19日12時撮影)と温熱環境の測定状況(右)図は,夏季に表面温度,気温,湿度,黒球温度等の温熱環境の測定を行ったブロック塀と生垣の熱画像である(図左).両者の表面温度には日中最大で約14℃の差(熱電対による直接測定値)が,黒球温度では同様に8℃の差がみられた.こうした違いが周辺の暑熱環境にも影響を及ぼすものと考えられ,今後,体感温度等についても検討を進める予定である.今後の展望・方向性■グリーンインフラを活かした安全安心で持続可能なまちづくり公園や街路樹だけでなく,森林や農地等のグリーンインフラは,防風や洪水,津波被害の軽減のほか,火災の延焼防止や避難場所の提供等災害時にはさまざまな防災機能を発揮することが知られ,実際にそうした機能を発揮した事例も数多く確認されている.一方,単独の機能に絞れば人工的なインフラには及ばず,機能の定量評価も難しい側面がある.今後は,機能の定量評価やグリーンインフラの特性を活かした効果的な保全や配置の検討とともに,近年,管理不足や放棄による緑地の荒廃が問題となり,不法投棄等の課題も顕在化しているため,グリーンインフラの維持管理に対する検討も重要な課題である.Point■多発する気象災害のさらなる激甚化,南海トラフ巨大地震,首都直下地震への危惧■SDGsに配慮した安全・安心で持続可能なまちづくりに対するグリーンインフラへの期待■グリーンインフラの機能の定量評価と効果的な保全や配置,維持管理等が課題概要■災害とグリーンインフラ近年,さまざまな気象災害が頻発し,各地で甚大な被害が相次いでいる.今後,地球温暖化の進行にともない気象災害のさらなる激甚化や南海トラフ巨大地震,首都直下地震の発生が危惧される.そのため,防災情報や防災教育等の充実とともに,安全・安心な地域づくりが求められる.そうしたなか,SDGsにも配慮した,自然環境が持つ多様な機能を積極的に活かしたグリーンインフラや「生態系を活用した防災・減災」(Eco-DRR)にもとづいたレジリエントで持続可能なまちづくりに期待が寄せられている.■多様な機能を持つグリーンインフラ気候変動対策の必要性とともに生物多様性に対する意識の高まりにより,近年グリーンインフラやEco-DRRを重視しようとする機運が高まりを見せている.グリーンインフラは「社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において,自然環境が有する多様な機能を活用し,持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組」(国土交通省)とされ,防災機能だけでなくさまざまな機能があるとされる.その一つに環境保全機能があり,光合成を介しての二酸化炭素や大気汚染物質の吸収による地球温暖化の緩和や大気浄化のほか,緑陰や蒸発散作用によるヒートアイランド緩和等がある.一般に緑被率の高い都市ほど気温が低く,熱帯夜日数も少ないなど,都市において公園等の緑地はクールアイランドを形成することが知られている.また,街路樹の植栽や屋上緑化といった緑化の推進もグリーンインフラであり,生垣等の接道部緑化もその一つである.地震時における倒壊の危険性が指摘されるブロック塀に対し,安全性や景観上の観点から多くの自治体が生垣への転換を推進している.安全・安心で持続可能なまちづくりとグリーンインフラ水・土砂防災研究部門横山仁

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