令和3年度成果発表会
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■令和4年度にはE-ディフェンスを用いた検証実験を計画しています。概要日本は地震国であり、新技術を社会実装する際には高度な耐震信頼性が求められます。既存の構造物では実地震による被害の経験や、多数の実験や解析を通じ、設計に必要な知見が蓄積されていますが、新しく開発される構造物に対してはそのような知見が不足するため、最新の計算科学を取り入れた設計が期待されます。本研究では、新技術となる次世代原子力システムの耐震設計手法の構築に計算科学を活用することを念頭に、発電施設の重要な設備の一つである配管系について、地震時の非弾性挙動を再現できるよう、解析モデルの精緻化に取り組んでいます。2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図1解析モデルの構築と加振試験による実現象の把握の相互関係(注:図中の配管系モデルは過去の実験で使用したもので、今回の研究で使用する試験体とは形状が異なります)本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業「地震荷重を受ける配管系の非弾性を考慮した高精度シミュレーションモデルの構築」で実施しているものです。(R02~R04年度(予定)、研究代表者:中村いずみ(防災科研)、研究分担者:澁谷忠弘(横浜国大))現在の原子力発電施設の耐震設計では、弾性解析に基づく耐震設計(弾性設計)がされています。弾性解析では保守的な評価が可能という利点がある一方、現実世界の応答で現れる、摩擦や弾塑性変形などのさまざまな非弾性挙動を正確に再現するという点では十分ではありません。近年では設計の想定を超えた条件(BeyondDesignBasisEvent、いわゆるBDBE)に対する配慮が求められるようになっており、従来の設計で考えていた弾性域を大きく超えた弾塑性域の挙動評価が必要であることを踏まえると、次世代原子力システムの耐震設計・耐震性能評価では、終局挙動も含めた非弾性挙動の適切な評価が重要となります。そこで、本研究では、配管系で考慮すべき非弾性現象のうち、①配管の破損評価に関わる材料の破壊過程のモデル化、②支持部の摩擦挙動のモデル化の2点を取り入れ、解析モデルの精緻化を目指しています。また、令和4年度には、世界最大の三次元震動台であるE-ディフェンスで実験を行い、配管系が破損するまでの物理データを取得するとともに、そのデータを用いたV&Vを実施し、解析モデルの精度検証を行う計画です。地震減災実験研究部門中村いずみ今後の展望・方向性令和3年度までに、E-ディフェンス実験用の試験体設計・製作、配管形状や材料特性の実測データの取得、損傷メカニズムを考慮した材料のモデル化手法の整備、E-ディフェンス実験の事前解析モデルの作成を行いました。令和4年度には、E-ディフェンス実験を実施して実現象のデータを取得するとともに、実測データに基づく解析モデルの精度検証と信頼性評価を行う計画です。また、得られた成果は高精度シミュレーションモデルの作成手順としてまとめ、配管系の耐震性評価の高度化につなげたいと考えています。Point■発電施設の配管系を対象とし、地震時の非弾性挙動を再現できる高精度シミュレーションモデルの構築に取り組んでいます。配管系地震応答解析の精緻化に向けて

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