令和3年度成果発表会
62/158

棟 L2の位置からの 堆積幅L1 2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会地面 雪 屋根 建物 屋根の水平長さ 勾配 軒の高さ 屋根に積もった雪の厚さ 軒 安息角 平均的な落雪 位置L2 建物からの堆積幅L1+L2 軒から真下へ落雪した場合の堆積形状 平均的な落雪位置 軒から落雪が飛び出した場合の堆積形状 最も遠くへ到達する落雪の軌跡 積雪 図屋根からの落雪の堆積幅計算の模式図(側面図)また、屋根からの落雪の軌跡や必要な堆積幅等を計算・表示するウェブサイトの作成を計画している。図は建物と落雪の位置関係を表す模式図である。軒の上に積もった雪は真下に落下するが、屋根の上で滑走する距離が長くなると飛び出す時の水平速度が増加し、その結果遠方へ落下する。屋根上の滑走距離が最も長い、棟の上に積もった雪が落下すると到達する水平距離が最も長くなる。最大到達距離までの範囲内に屋根から雪は落下し、堆積するはずであるがその過程や計算は複雑である。そこで近似的に最大到達距離の中程の位置に屋根からの全ての雪が落下すると仮定した。例として屋根の水平長が9m、勾配が3/10の2階建て建物に対し、積雪深が1mの場合の落雪の堆積幅(L1+L2)は計算の結果、落雪の飛び出しを考慮した場合はしない場合よりも1.5m拡大することが示された。雪氷防災研究部門小杉健二概要積雪地域において、屋根に堆積した雪の落下は人や物に直接衝突した際の衝撃力によりけがや損壊等の危害を与える可能性がある。このため、屋根から雪が落下して到達する距離をあらかじめ把握しておくことは、事故防止のために重要である。また、落雪が家屋周囲に堆積することにより、除雪作業の必要性をもたらす原因ともなる。家屋周囲の除雪中の落雪による埋没事故は、雪関連人身事故の中で雪下ろし中の転落と並んで大きな割合を占めている。屋根からの落雪に人が埋没すると、衝撃力を受ける他に、長時間が経過すると凍傷、低体温症、窒息等に至り命に関わる危険性がある。こうした理由から、一冬を通じて屋根からの落雪を堆積させておくのに必要な範囲を計算で求められれば、落雪の衝突や埋没の危険性が回避できる建物の設計に役立つと言える。屋根からの落雪の堆積範囲に関するこれまでの研究では、屋根雪が軒先から真下に落下すると仮定して堆積した雪の形状や範囲が計算されていた(図中の破線)。しかし、屋根の摩擦の低下や建物の大型化等により落雪の水平方向への飛び出しが無視できなくなると、これまでの計算方法では落雪の堆積範囲を過小評価する恐れがあると考えられる。そこで、水平方向の飛び出しを考慮した落雪の堆積範囲の計算方法について検討を行った。今後の展望・方向性今回検討した屋根からの落雪の堆積幅の計算方法は、計算を簡略化するための仮定を含むが実際の現象の重要な過程を表現していると考えられる。今後、定量的な検証が必要である。Point■積雪地域において屋根からの落雪は命にもかかわる重要課題■落雪の水平方向の飛び出しによりその堆積幅は拡大■家屋周囲の安全のために落雪の到達距離や堆雪に必要な範囲の把握が重要屋根からの落雪の堆積範囲の計算について

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る