令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会関東地域を対象とした地震複合災害の検討の取り組みPoint■マルチハザードを対象とした全国概観版の確率論的リスク評価により、地域ごとの特性を反映した、各種自然災害への対策・対応の優先順位付けに資する情報を生成し、防災施策へ貢献し自然災害レジリエンスの向上を図る。概要これまで培ってきた地震や津波のハザード・リスク評価の知見を他の自然災害に適用し、得られたハザード評価結果を意思決定に資するリスク評価につなげるのがマルチハザードリスク評価です。地震動、津波、火山噴火、地すべり、地盤災害、高潮、洪水、暴風などの自然災害に対して、各地域がどの災害に優先的に備えるかを知るには、起こり得る自然災害を共通の指標で比較する必要があり、その指標となるのがリスク情報です。将来の自然災害を比較するためには、その災害の規模と切迫度(発生頻度)が紐づけられたリスク情報が必要となります。そのためには、まず、自然災害の規模と発生頻度の関係を明らかにする必要がありことから、各種自然災害のイベントカタログを作成し、それを基に規模別発生頻度のモデルを構築する手法について検討しています。また、災害時にどこでどのような被害が生じるかを予測することも重要な課題です。過去の災害情報だけではこれまで経験したことのない低頻度の大規模な災害についての知見は得られないため、シミュレーションを活用します。また、災害時の被害情報など、リスク評価に関するデータを将来に亘って継続的に収集する仕組みについても議論しています。地震以外の自然災害も対象とするため、令和元年度から防災科研の他の研究部門の研究員も交えたマルチハザードリスク評価研究に関する準備会を定期的に開催するとともに、外部学識者からなる研究会を立ち上げ、科学的見地からの意見を今後の研究に活かす枠組みを整備しました。今後の展望・方向性全国を概観した確率論的なマルチハザードリスク評価に向けて、まずは、対象地域を関東地域に限定し、地震に関わる複合災害についての検討を始めています。首都機能を担う首都圏の地震リスクは日本国内のみならず世界的にも影響力が大きく、地震発生の切迫度のみならず、被害の甚大さも踏まえた地震対策が必要だと考えられることから、首都圏で切迫度が高いと懸念されている首都直下のマグニチュード(M)7クラスの地震に加え、切迫度は低いと考えられるものの多種多様な災害が広範囲で同時・複合的に発生する可能性のあるM8地震(関東地震)を対象として、地震動、津波、液状化、地すべりなどの複合災害の検討を始めています。一方で、防災科研のみではすべての自然災害を対象とした評価を行えるわけでもありません。防災科研のハザード情報を基盤として、他の研究機関や公的機関、民間企業などとともに確率論的なリスク評価を行っていくことで、自然災害の比較を可能とするマルチハザードリスク評価を実現したいと考えています。マルチハザードリスク評価マルチハザードリスク評価研究部門前田宜浩

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