令和3年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会左上:実験場所右上:実験斜面の模式鳥瞰図*1左下:生田緑地公園内に建立された慰霊碑(防災科研総務部提供:2021年11月11日撮影)右下:人工降雨による自然斜面崩壊実験事例*2参考文献:*1井口隆「ローム実験および事故の概要および教訓」, *2落合博貴「実斜面における野外崩壊実験について」(どちらも2021年度土砂災害予測に関する研究集会発表概要集より)11月9日から開始した実験は、当初非公開予定であったが、報道関係からの問い合わせもあり、10日にプレス発表を行った。降雨による崖くずれ現象を解明するため、ローム層から構成される斜面にレインガンを用いて散水し、様々な計測機器を用いて斜面の挙動を計測した。崩壊は斜面下部が膨らんで始まり、第1波は泥水状で防護柵に到達、第2波以降は数ブロックに分かれて流下、多くの見学者を襲った。この崩壊土砂運動の予見可能性と実験に対する注意義務が後の刑事裁判の論点となった*1。また、教訓とすべき事故発生の主たる要因を以下の順で指摘する:準備期間の不足(実質2年間);実験地が公園地内で伐採困難であり、実験斜面全体を見通せるのは防護柵付近のみ;公園遊歩道工事捨土の存在に対する認識不足;急遽公開実験となったことによる心理的側面;参加メンバー間の情報交換不足;レインガンによる不均質な散水。マルチハザードリスク評価研究部門山田隆二井口隆(客員研究員)概要1971年11月11日15時30分過ぎ、科学技術庁国立防災科学技術センター(防災科研の前身)、自治省消防庁消防研究所、建設省土木研究所の3研究機関が、多摩丘陵にある生田緑地公園(川崎市)地内において実施した人工降雨による斜面崩壊実験では、想定以上の速度と流下距離の崩壊が発生し、50mほど下の柵の後方で見学・取材していた15名の死者と、11名の負傷者を出す事故となった。この実験は、都市周辺におけるがけ崩れ災害の防止軽減と崖くずれ現象の解明を目的とする「ローム台地における崖くずれに関する総合研究」の一環として実施され(昭和44~46年度、特別研究促進調整費、予算:5500万円)、通商産業省工業技術院地質調査所を含む国立研究所4機関が参加した。その内容は、①ローム台地の広域的な地質調査及び崩壊履歴調査②生田試験地における自然降雨時の地下水、計器計測と解析③同試験地の「ローム斜面」の人工降雨による崩壊実験である。背景として、高度成長期の宅地開発に伴い、1958年狩野川台風など、関東ローム層での崖くずれ災害が頻発するという社会的要請があった。今後の展望・方向性防災科研主催「2021年度土砂災害予測に関する研究集会」において、この実験は人工降雨による自然斜面崩壊実験としては最初期かつ希少な事例であると指摘された*2。11年間にわたる刑事裁判が実験関係者を自粛させてきた事は否めないが、この実験で得られた膨大なデータから本来の目的であった崖くずれ現象の解明を今試みることも、尊い犠牲に報いる途であろう。Point■人工降雨による斜面崩壊実験事故から50年が経過■防災科研・研究集会にて尊い犠牲と教訓を振り返った■人工降雨による自然斜面崩壊実験として貴重な事例川崎市生田ローム実験事故から50年

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