令和3年度成果発表会
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2022.2.28令和3年度成果発表会図1.データベース・経験的予測手法・シミュレーションの関係図2.MW7.0~7.5のK-NET・KiK-net記録による地震動強さの距離別(上段・中段・下段それぞれ0~10km,10~31.6km,31.6~100km)頻度分布(灰色)に,シミュレーションによる同頻度分布を重ねた(赤色).地震動強さ指標は,左列からPGA,PGV,h=5%加速度応答スペクトル(周期0.2,0.5,1,2,5秒).内挿・外挿検証学習データ高効率化・加速学習データ内挿当研究部門では,地震ハザード評価の高度化を主目的として,国内の強震観測網によるデータを統一的に扱えるデータ基盤としての「強震動統一データベース」の作成を進めている(図1・緑色部分).また,データベースに基づく経験的予測手法であるデータ駆動型地震動予測モデル(GMPE)の高度化研究を行っている(図1・水色部分).ただし,経験的予測手法では未経験の事象,つまりデータベースに無い事象を予測することは本質的に不得手であるという根本的課題がある(一般に地震記録はマグニチュード(M)が大きいほど,また震源距離が短いほどデータは少なく,例えば防災科研の強震観測網K-NET・KiK-netにおいてMW7.0以上の地震で断層距離30km程度以内で得られた記録は2016年熊本地震時の数地点のみである).そこで,地震動シミュレーションデータを活用することにより,観測記録の不足を補ってデータベースを拡充し,経験的予測手法の高度化に寄与したい(図1・オレンジ色部分).シミュレーションデータベース本研究では,M6~7級の主要活断層帯等を対象に,広帯域地震動シミュレーションデータを作成し観測データベースの拡充を試みる.シミュレーション波形から得られる各地震動指標をM・距離別に観測データベースと頻度分布を比較した(図2).観測記録が十分に得られている領域ではその分布を真値とみなしてシミュレーションデータ分布の妥当性を評価する.観測記録が少ない領域ではシミュレーションデータを追加することで平均値などの分布形状が安定するよう,適切なシミュレーションデータの質と量を見積もる.経験的手法・AIPoint■地震ハザード評価のためのデータ基盤「強震動統一データベース」■観測データの不足をシミュレーションデータで補いデータベース拡張■データ駆動型地震動予測モデルの高度化概要災害の予測手法には,データに基づく経験的予測(AIを含む帰納的アプローチ)と,理論・モデルに基づくシミュレーション(演繹的アプローチ)がある.データベース・経験的手法・シミュレーションはそれぞれ互いに補い合い,融合的に発展していく必要がある(図1).今後の展望・方向性シミュレーションデータによって拡充された強震動統一データベースを用いて新たな地震動予測モデルを構築する.また,シミュレーションに帰納的アプローチを併用してシミュレーションの高精度化と計算高効率化をはかる研究を進める(図1の水色からオレンジの矢印)シミュレーションデータによる強震動統一データベースの拡張に向けてマルチハザードリスク評価研究部門岩城麻子

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