令和4年度成果発表会
100/210

■摩擦実験で生じるイベントを解析するには高精度な計測が必要■AEセンサーの振幅・位相特性を推定し,計測波形を補正■数値シミュレーションと組み合わせることで,微小イベントの震源メカ2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会(a)ボールドロップ試験での震源とAEセンサーの位置(AEセンサーは断層面直下70mmに設置)(b)AEセンサーで計測された機器特性補正後の計測波形と数値シミュレーションによって求められた計算波形の比較(60kHz-400kHzのバンドパスフィルターを適用).メートルスケールの大型岩石試料を上下に重ね合わせ,その接触面を模擬断層として摩擦すべりを生じさせる摩擦実験では,断層全体を一挙に破壊するもの(本震)から,断層面内の一部のみ破壊する微小なイベントまで大小さまざまなスケールでのすべりイベントが生じる.本実験では,微小イベントの震源メカニズムや,それが本震とどのような関係にあるのかについて解明を目指している.断層面内で生じる微小イベントを検知し,その震源メカニズムを推定するためには,岩石試料側面に取り付けたAEセンサーを用いて計測される波形データが用いられる.しかし,その計測波形にはAEセンサーやプリアンプの応答特性およびセンサーの接着状態が影響するため,震源メカニズムを波形データから推定するためにはそれらの影響を補正する必要がある.そこで本研究では,既存研究で提案されてきた手法を組み合わせ,本試験機に取り付けられた32個のAEセンサーの機器特性を一挙に補正する手法を開発した.まずAEセンサーやプリアンプの応答特性を個別に推定し,それらの振幅・位相特性を補正した.さらに,個々のAEセンサーの接着状態を補正するために,直径2mmの金属球を模擬断層面に自然落下させ,その衝突を既本研究で確立した機器特性の補正手法を用いて,摩擦実験中に生じる微小イベントの震源メカニズム解析を実施する.時間領域での波形解析を行うことで,震源の規模だけでなくすべり方向などの破壊メカニズムについても推定する.室内岩石摩擦実験は模擬断層面を摩擦実験後に観察することができるという利点を活かし,断層面の状態と微小イベントの震源メカニズムを結びつける.そして,ひずみゲージや断層面の相対変位を計測するすべり計など,AEセンサー以外の計測機器も用いて摩擦実験中の複雑な断層破壊様式を計測し,断層破壊過程と微小イベントの発生,およびその震源メカニズムとの関係について解析を進める.知の震源とするボールドロップ試験を実施した(下図).機器特性およびセンサーの接着状態を補正した計測波形はボールドロップ震源を仮定した数値シミュレーションと良い一致を示した.本研究で提案した計測データの補正手法は震源メカニズム推定の精度向上に貢献すると考えられる.ニズムや,その本震との関係について解明を目指す.大型岩石摩擦実験で生じる微小イベントの高精度計測地震津波防災研究部門大久保蔵馬

元のページ  ../index.html#100

このブックを見る