令和4年度成果発表会
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■岩石の摩擦の性質は地震の起き方を左右する重要な要素■センチメートルとメートルの二つの大きさで岩石摩擦すべり実験を実施■同じ条件でも断層の大きさで摩擦の性質に違いがあることを発見2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会図1メートルサイズの岩石摩擦実験。防災科研が所有する大型振動台を利用して実施した。模擬断層の大きさは1.5m ×0.1mで、変はんれい岩を粉砕したガウジ試料を散布した。図2センチメートルサイズの岩石摩擦実験。電力中央研究所が所有する二軸摩擦試験機を利用して実施した。模擬断層の大きさは10cm ×5cmで、メートルサイズ実験と同様、変はんれい岩を粉砕したガウジ試料を散布した。ガウジ試料ガウジ試料1.5 m地震とは断層がずれてすべる現象です。そのすべり方が速ければ普通の地震に、ゆっくりであればスロー地震と呼ばれる地震の規模に対して揺れが小さな地震になります。このように断層のすべり方によって地震の起き方は異なり、そのすべり方を左右する重要な要素の一つが岩石の摩擦の性質です。当然のことながら、地震がどのように起きるのかを予測することは防災・減災の観点において重要です。そのため世界中の研究機関で岩石摩擦の研究が進められていますが、これまでの研究においては小さな岩石で調べた摩擦の性質は自然界の大規模な断層においても同一と仮定されていました。この仮定が適切かどうかは予測の結果に大きな影響を与えるため、防災科研では断層の大きさが摩擦の性質に与える影響についての実験研究を進めています。特に近年は自然の断層を模してガウジと呼ばれる岩石の粉末を模擬断層面に散布し、その状態で摩擦すべりを与える実験を二つの異なる大きさで実施しました(図1、図2)。それにより、実験条件は全く同じであったにも関わらず、断層の大きさによって一部の摩擦の性質が異なるという結果が世界で初めて示されました。上記の結果は二つの重要な意味を持ちます。一つは、小さな岩石を使って推定した摩擦の性質を自然地震の予測に利用する際には何らかの補正が必要そうだということ、もう一つは、断層の大きさは地震の規模のみならずそこでどのような種類の地震が起きるかも決めているかも知れないこと、です。ただし、まだセンチメートルとメートルの二つのサイズ間で摩擦の性質に違いが見つかっただけで、その差が実大断層サイズまでどのように広がっていくのか(あるいは広がらないのか)不明なままです。そこで防災科研はさらに大きな世界最大規模の岩石摩擦すべり実験を実施し、断層の大きさが岩石摩擦の性質に与える影響と、その影響が及ぶ範囲を明らかにしていく予定です。断層の大きさで地震の起き方は変わるか?~二つの大きさの岩石ガウジ摩擦すべり実験~地震津波防災研究部門山下太

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