■南海トラフに沈み込むフィリピン海プレートの厚さを推定■海底観測網のデータを用いることによって海域下での推定が可能■巨大地震すべり域との関係は?2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会図本研究で得られた、紀伊水道から熊野灘に至る海域下に沈み込むフィリピン海プレートの厚さ分布南海トラフ沿いでは、近い将来巨大地震が発生するものと懸念されている、本研究では、熊野灘から室戸沖に展開された海底観測網のデータから、地震波トモグラフィーの手法を用いて、南海トラフ沿いの海底下の構造を推定することにより、巨大地震発生域におけるフィリピン海プレートの姿を明らかにし、プレート深部の構造やその厚さと巨大地震すべり域との関係を明らかにすることを目指している。本研究では、プレートの厚さの推定は以下の手順で行なった。1.地震波トモグラフィーによって得られた結果から、P波速度・S波速度分布の南北断面図を作成する。2.断面図上で、フィリピン海プレートの上面と下面を同定する。3.プレート上面および下面の深さを、図上で南北方向に0.2°間隔で読み取る。この際、P波速度・S波速度分布のどちらにおいてもプレート境界面が明瞭にあらわれている場合には、両方の深さの平均をプレート境界面の深さとし、どちらかのみが明瞭な場合には、明瞭な境界面の深さをそのまま境界面の深さとして採用する。どちらも不明瞭な場合は「データなし」とする。4.ここで採用した上下両面の深さの差をプレートの厚さとする。南海トラフ直下において、プレートの厚さやさらにその深部の構造と巨大地震すべり域との関係を議論するには、本研究で得られた地震波速度構造が決して十分な分解能を持っているとは言えない。これは、解析に用いるデータが不足しているためと考えられる。従って、もっと多くのデータを用いた解析を行う必要がある。そこで、日々観測されるデータを追加することによって分解能の向上を図る。また、東経134°以西については海底観測網を現在構築中であり、この新しい観測網で観測されるデータを用いることにより、この領域の分解能が飛躍的に向上するものと期待される。そして、これらのデータを用いた解析結果から、プレート深部の構造やプレートの厚さの不均質と巨大地震すべり域との関係についての検討を行うことが肝要である。上述の方法を、東西方向に0.2°毎に作成した南北断面図それぞれに適用し、この海域下に沈み込むフィリピン海プレートの厚さ分布を推定した。下図に、推定した厚さ分布を示す。潮岬の先にプレートの厚い領域、熊野灘と紀伊水道沖のトラフ近傍にプレートの薄い領域があらわれている。ここで得られた、プレートの厚い領域と薄い領域は、Yokota et al.(2016)による滑り欠損の小さい領域と大きい領域に対応しているように見える。地震津波火山ネットワークセンター神谷眞一郎巨大地震発生域のプレート厚さ推定
元のページ ../index.html#111