令和4年度成果発表会
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■東北沖地震の後、局地的に余震が本震以上の揺れを引き起こした■規模は大きくなくても、近くで起こる地震は強い揺れをもたらす■大地震だけではなく、その後の地震活動の推移予測も重要2019.○○.○○○○○○○○○○○○○(a)東北沖地震(本震)の震度震度(b)本震後1年間の最大震度震度2023.2.21令和4年度成果発表会□:震度5強以上かつ本震以上の震度図(a)東北沖地震本震の震度分布と、(b)本震後1年間に各地点で記録された最大震度の分布。図中の曲線は本震のすべり量分布(Suzuki et al., 2011)、星印は最大震度をもたらした地震の震央を示す。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下、「東北沖地震」)の後、非常に多くの地震が日本各地で誘発されました。ここでは大地震直後から誘発されるこれらの地震を、広い意味での「余震」と呼ぶことにします。平均的には、最大余震のマグニチュードは本震よりも1以上小さい場合が多く、M9.0の東北沖地震の最大余震も、本震の30分後に茨城県沖で発生したM7.6の地震でした。それでは、余震による最大の「揺れ」も、マグニチュードと同様にひと回り以上小さいのでしょうか。図は、防災科研の強震観測網K-NETと基盤強震観測網KiK-netで観測された東北沖地震の震度分布(a)と、その後1年間に各観測点で記録された最大震度の分布(b)を示しています。1年間の最大震度の分布は、大局的には東北沖地震の震度分布と似ています。しかし細かく見てみると、新潟―長野県境や静岡県など、局地的に本震以上の揺れが観測された地域もあることが分かります。図b中の黄緑色で囲まれた観測点は、余震により「震度5強以上」かつ「東北沖地震の本震より強い震度」を観測した点です。先に述べた地域のほか、岩手県南部や宮城県北部、福島―茨人口密集地の近くで発生した余震は、しばしば本震以上の被害をもたらしてきました。例えば、1944年東南海地震(M7.9)の1か月後に発生した三河地震(M6.8)は、局地的に東南海地震を上回る揺れをもたらし、その犠牲者数は東南海地震の2倍近くに達しました。1854年安政東海・南海地震の1年後にも安政江戸地震が発生しています。次の南海トラフ巨大地震においても、直後から活発な地震活動が誘発されると考えられます。その一部が局地的に本震以上の揺れをもたらし、大被害をもたらす可能性は否定できません。「余震」は本震よりも小さく、揺れも本震と比べて小さいイメージがありますが、それは必ずしも正しくありません。大地震だけではなく、その後の地震活動の推移予測や、誘発のメカニズムの研究なども進めることが重要です。城県境付近、千葉県東部など、東北沖地震でかなり強い揺れを経験した地域でも、それをさらに上回る揺れが観測されています。図中の星印は、いずれかの観測点で最大震度をもたらした余震の発生位置です。このような余震のほとんどが、東北沖地震で大きくすべった領域(図の黒曲線)よりも陸に近い海域や陸域の直下で起こっています。いずれも本震よりかなり小さいM5~7程度の規模です。規模は本震より小さくても、近くで起こる地震が局地的に本震以上の強い揺れをもたらすことが分かります。所属名地震津波火山ネットワークセンター氏名澤崎郁余震が引き起こす本震以上の揺れ

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