令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2022.2.28令和3年度成果発表会図2016年熊本地震(後発の本震)への適用例。各観測点から発した波面の位置に1ポイント与えて加算した場合の各格子点での得点(最大値)をカラーで示している。高得点のところを震源として抽出する。中抜き赤丸印が抽出した震源、中白抜き丸印が未抽出の震源。震源決定は地震活動の把握のための基本作業であり、地震発生時には、まず、計算機によりP波、S波の到着時刻を自動読み取り、震源決定し、次に人の目によって読み取った正確な値を基にした精密な震源決定を行うのが標準的なやり方である。地震活動が定常的な場合には、これで十分に対応できるが、群発地震が発生したり巨大地震後無数の余震が発生した場合には、P波S波の位相の同定、地震毎の読み取り値のグルーピングが難しなり、うまく処理できない場合がある。そこで今回はそのような時でも地震活動の概略を把握することを目的に、精度はそこそこでも自動的に震源決定を行える手法を開発することにした。方法はいたって簡単で、各観測点からPあるいはS波の到着時に時間を逆にP、S両方の波を領域内に出し、その波が重なったところを震源とするものである。波は波形ではなく、波線追跡法などで計算した走時(時刻)を使う。走時は対象領域全域で観測点ごとにあらかじめ計算しておく。次にこの手法を実際の読み取り値に適用した結果の一例を図に示す。データは2016年の熊本地震(後発の本震)で対象領域内のHinet59点で取得された手動読み取り値、後発の本震から4時間分を使用した。対象領域は0.05°,5km,0.5sの格子間隔としている。定常精密震源決定処理で決まった地震と比較すると、今回の手法では誤差の大きなものを除いて91%の地震の検出に成功している。精密震源と今回の地震の位置と時刻の差は、格子間隔で正規化した値では平均1.0となった。読み取り値が時間軸上で重なる地震の割合が49%と高い中で、地震活動の概略を把握するためには、地震の検出率、時刻位置の差ともに十分な高率、精度で決まったと評価できるであろう。さらに2011年東北地方太平洋沖地震(本震後4時間)に適用した。この場合、太平洋沖での見かけの地震の出現、低い地震の検出率(7割前後)などの問題が発生した。観測点が陸上にしかないので震源域の片側に偏って配置されている、地震が多く時間軸上で読み取り値の重複する割合がさらに高い(88%)、などが原因と思われる。地震活動の概略を把握することはできるが、改善の余地が残った。将来予想される南海トラフ地震の場合も類似した状況になると思われるので、今後、改善する方法を考案する必要があるだろう。地震津波火山ネットワークセンター関口渉次■簡易な用法で自動的にほどほどの精度の震源分布を得る■大地震後、群発地震の地震活動の概略把握に役立つ■2観測網の震源データセット統合、精密震源決定の初期震源としても利用可能簡易な逆伝搬法による震源決定

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