■S-net設置後6年間のデータから得られた精密震源分布■2021年と2022年福島沖地震は複数のプレート内断層の活動■2011年宮城沖地震(MW7.1)余震は海洋プレートのマントル内2019.○○.○○○○○○○○○○○○○プレート境界面の深さは、それぞれ黒または赤破線がIwasaki et al. (2015) 及びLindquist et al. (2004), オレンジ線はKita et al. (2010)及びNakajima & Hasegawa (2006)による。2023.2.21令和4年度成果発表会図1左図:宮城県沖と福島県沖周辺のS-net観測点(五角形)。星印はHi-net観測点の位置を示す。赤枠内の震源分布を図2と3に拡大して示す。右図:左図の黄点線枠内の海底地形の拡大図。海溝軸東側のアウターライズ域にみられる海溝軸にほぼ平行な線状地形は、太平洋プレートの沈み込み前に海底面に発達した海底活断層である。図2福島県沖における2021年2月13日MJ7.3発生後1日間(黒)と2022年3月16日MJ6.1 発生後1日間(赤)の震源分布.下段には,上段左の震央分布図の(I),(II),(III) のそれぞれの青線から5km以内の地震の深さ分布の鉛直断面図を示す.黒破線はプレート境界面の深さ(Iwasaki et al., 2015, Lindquist et al., 2004)を示す。図3宮城県沖における震源分布図。灰色:2016年4月1日-2022年3月31日、黒2021年3月20日MJ6.9地震の発生以降5月1日MJ6.8の地震発生前まで。赤:5月1日MJ6発生後5月31日まで。黒コンターは1978年宮城県沖地震(MJ7.4)のすべり分布(Yamanaka &Kikuchi, 2004)。下図は、上図のaa‘青破線から±20km以内の震源分布の断面図.左図には、右上図黒枠内におけるbb’ の紫点線から±10km以内の震源分布の断面図を示した。いわゆる海溝型地震は、プレート境界だけではなく沈み込んだ海洋プレート内でも発生し、しばしば大きな被害をもたらします。プレート内地震を引き起こす断層として、プレートが沈み込む前に海溝海側のアウターライズ域で形成された断層が再活動したものがあります(図1)。日本海溝および千島海溝域に設置されたS-net(Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench:日本海溝海底地震津波観測網)のデータから、太平洋プレート内における精密な震源分布を求めることが可能になりました。2021年と2022年に発生した2つの福島県沖地震(それぞれMJ7.3とMJ7.4)の余震分布は、沈み込む太平洋プレート内に傾斜の異なる複数の断層面の存在を示しました(図2)。また、宮城県沖における2021年3月と5月の地震(それぞれMJ6.9とMJ6.8)はプレート境界面上で発生しましたが、S-net設置後の2016年4月1日から6年間に発生した地震の分布を見ると、MJ6.8の震源の深部の海洋プレート内に2011年4月7日(Mw7.1)の余震と考えられる活発な地震活動がみられます(図3:aa’ 断面の黄楕円)。プレート境界と余震活動域の間には海洋地殻の厚さ程度の低活動域(bb’ 断面の赤楕円) があり、余震はマントル内で発生していることを示唆します。福島県沖や宮城県沖で検出された海洋プレート内地震の断層とプレート境界がなす角度から、これらの地震はアウターライズ域の断層の再活動と考えられます。沈み込む海洋プレート内の地震の発生場所や発生頻度については、まだよくわかっていません。S-netデータを用いて海溝のより精密な震源分布を把握し、プレート内の震源断層の詳細なイメージを得て、地震発生の長期評価に貢献します。地震津波火山ネットワークセンター西澤あずさ東北沖で沈み込むプレート内地震の精密震源分布ーアウターライズ域で沈み込み前に形成された断層の再活動ー
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