令和4年度成果発表会
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■TNSは津波の遡上まで計算できるソフトウェアである。■CPU版とGPU版で開発し、その後の改良に努めている。■コンパイル済みの更新版の実行ファイル等を公開見込みである。2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会図TNSの例題3による高知県沖の断層に対する浸水計算結果。(左)流速の上限値10.0[m/s]、フルード数2.0、(右)流速の上限値10.0[m/s]、フルード数の設定なし。このケースでは、ほぼ同一の結果が得られている。津波は,海底地殻変動などによって海水に擾乱が生じて,重力を復元力として周囲の海域に伝播し,しばしば陸域に遡上する自然現象である.防災科研では,遡上までを含めた津波現象を差分法による数値計算によってコンピュータ上で迅速に実施できるソフトウェアの開発を進めてきた(三好・他,2018,2019JpGU).ソフトウェアの名称は,津波シミュレータ(TNS:TsuNamiSimulator)であり、津波シナリオバンクの構築に必要な部分をパッケージ化し,TNSVersion1.0として公開し(三好・他,2019防災科研研究資料),その後の更新版としてTNSVersion1.1を公開見込みである。TNSは,CPU版とGPU版で開発を進め,CPU版の主たる計算コードはFortran90でプログラム群を開発,GPU版はCUDA7.5に準拠してCUDACで開発を行った.計算コードは,基本的にはTUNAMI-N2(Imamuraetal.,2006)と同等の実装をしており,Cartesian座標系において,空間格子幅の比を1:3とするネスティング格子を用いた二次元非線形長波理論に基づく津波伝播・遡上計算が実施可能である.初期水位は,地殻変動計算プログラムDC3D(Okada,1992BSSA)を用いて,設定した震源断層面に対して半無限媒質での地殻変動を計算する.水平変動(TaniokaandSatake,1996GRL)や,Kajiura(1963,BERI)による水理フィルタも適用可能である.沖側は透過境界(Imamuraetal.,2006)および吸収領域(例えば,Claytonetal.,1977BSSA)を設け,陸側は遡上境界(小谷ほか,1998海岸工学論文集)を設定できる.TNSは津波のシナリオを膨大に計算する際に活用できるように開発したものである。今後も計算コードの高度化、利便性の向上、計算の高速化等に努める。Version1.1の主な変更は、流速の上限値、フルード数の上限値の設定を可能とし、毎ステップの計算時にそれぞれの上限値以下となるように線流量の値を制限できるようにしたこと、鉛直地殻変動量分布と初期津波高分布についてネスティング接続している親領域から補間する機能を追加したことである。図に流速の上限値、フルード数の上限値を加味した場合のシミュレーション結果を示す。ユーザは研究者,技術者,自治体の防災担当者を想定しており,一般的なLinux環境のもとで計算が可能なようにし、操作手引書,Linuxでコンパイル済みの実行ファイル,例題と入力ファイル設定例を含めてパッケージ化した.ソルバーは,CPUによる逐次計算に加えて,OpenMPによるスレッド並列,GPGPUによる計算に対応し,計算の高速化を実現している.地震津波火山ネットワークセンター三好崇之津波シミュレータTNSの改良について

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