2023.2.21令和4年度成果発表会不足を補う検証学習データ高効率化・加速内挿学習データ図1.異なる考え方・手法に基づく地震動予測モデルGMM(上段と下段)によって、強震動データベースに登録している記録を予測した結果(縦軸)と観測記録(横軸)を比較した図図2.データベース・経験的予測手法・シミュレーションの関係経験的予測・AI災害の予測手法には、データに基づく経験的予測(AIを含む帰納的アプローチ)と、理論・モデルに基づくシミュレーション(演繹的アプローチ)がある。データベース・経験的予測・シミュレーションはそれぞれ互いに補い合い、融合的に発展していく必要がある(図2)。経験的予測手法では未経験の事象、つまりデータベースに無い事象を予測することは本質的に不得手である。そこで、理論に基づくシミュレーションデータを利用して観測記録の不足を補ってデータベースを拡充する研究を進めている。観測記録を補えるだけの適切なシミュレーションデータの質と量を見積もるとともに、大量のシミュレーションデータ生成のための計算高効率化を進めている(水色からオレンジへの矢印)。⇒地震ハザード評価やリアルタイム被害推定等の地震防災研究に貢献シミュレーションデータベースPoint■強震観測記録のデータ基盤「強震動統一データベース」■地震ハザード評価の高度化に資するデータベースの利活用■観測データの不足をシミュレーションデータで補いデータベース拡張概要地震大国である日本では、70年以上にわたり強震観測が行われており、阪神大震災以降に設置された防災科研のK-NET,KiK-netをはじめとして、官民の研究機関・企業等による観測点数・記録数は世界最大級である。被害を伴う大きな地震は頻繁に起こる事象ではないため、継続的な地震観測により得られる貴重な記録を適切に管理し利活用することが、地震現象を理解し、適切に備えて対応する上で極めて重要である。当研究部門では,国内の強震観測網による観測記録にメタデータ(震源情報、観測点情報、各種地震動強さ指標など)を付与し、データを統一的に扱える共通研究基盤としての「強震動データベース」の作成を進めている。今年度までに、地震ハザード評価に係る研究者・実務者および情報科学・機械学習の研究者らとの共同研究により、まずは”K-NET,KiK-net版”強震動データベースを構築した。さらにその利活用と拡張に関する研究を進めている。データベースの利活用の一つとして、データベースに基づく経験的な地震動予測手法であるデータ駆動型地震動予測モデル(GroundMotionModel;GMM)の開発・高度化研究を行っている。共通のデータ基盤ができたことで、異なる考え方・手法に基づいて得られる複数のGMMについて、その性能や特徴を互いに比較することが容易となる。今後の展望・方向性今後は、防災科研K-NET,KiK-net以外の強震観測網の記録についても、貴重な強震観測記録を適切に管理・保管するとともに、ステークホルダーに合わせた利活用を促す研究データ基盤を構築する。そのための仕組みづくりを他機関と連携して行う。•貴重な記録の散逸を防ぎ知的財産として管理•効率的なデータ管理により継続的な観測網維持•多分野における地震観測データ利活用の取組みを促進強震動データベースの構築とその利活用・拡張に向けてマルチハザードリスク評価研究部門岩城麻子
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