令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会硫黄島にある防災科研の天山観測点硫黄島の海岸線の変化。隆起のため海岸線が数百メートル沖に移動している。離島にあるため調査しにくいことなどから地下構造などがよくわかっておらず、マグマ噴火を予測することはいまだ困難な状況にあります。そのため、火山観測点での観測の他、定期的な測量や調査なども続けています。硫黄島には一般の住民はいませんが、自衛隊員や施設の維持、遺骨収集のために滞在している人がいます。滞在している人の安全のため、火山観測と研究を続けていく必要があります。Point■防災科研は50年以上、硫黄島で火山観測と調査を続けている。■硫黄島では年間1メートルを超える激しい隆起が観測されている。■2022年7月には南海岸沖でマグマ噴火の発生が確認された。火山防災研究部門上田英樹概要小笠原硫黄島は東京の南1200kmにある火山島です。気象庁が常時監視を行っている非常に活発な活火山の一つで、海岸近くでは頻繁に水蒸気噴火が起こっています。この島は直径約10kmカルデラの内側が隆起してできた島で、現在も年間1mを超える速さで隆起が続います。それによって海岸線の形も大きく変化しています。隆起は地下数キロメートルの深さにあるマグマ溜まりにマグマが蓄積されることによって起きていると考えられています。防災科研は硫黄島で50年以上前から火山観測と調査を続けています。島内には防災科研の常設の観測点が3か所あります。観測点には地殻変動を観測するためのGNSSアンテナと地震を観測するための地震計が設置されています。太陽光発電で電力を得て無線通信によってデータを送信しています。データは防災科研だけでなく気象庁にもリアルタイムで送信されていて、24時間の監視に使われています。地震計は、戦時中に使われた地下壕を利用して設置しています。地熱が非常に高く、この地下壕内の気温は50℃程度あります。防災科研は、防衛省の支援により年に数回硫黄島に渡島し、火山観測点の維持を行っています。今後の展望・方向性これまでの観測と研究から、頻繁に起こる水蒸気噴火についてはその特徴や発生メカニズムなどが分かってきました。硫黄島は近年特に活発になっており、2022年7月に南海岸沖で発生した噴火は、観測史上初めて、水蒸気噴火ではなくマグマが地表まで上昇したマグマ噴火であることが確認されています。地殻変動や地震活動には大きな変化が無いため、現在のところ大量のマグマが急激に上昇しているとは考えにくいですが、今後さらに活発化に向かう可能性は否定できません。小笠原硫黄島での観測と研究

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