■詳細な火山活動把握に資する精密地殻変動観測技術の開発■新たな地殻変動現象の発見と火山活動メカニズムの理解■新たなSAR活用技術の開発2019.○○.○○○○○○○○○○○○○レーダーアンテナSARによる地殻変動情報のデータベース火山観測用可搬型レーダー干渉計の開発2023.2.21令和4年度成果発表会次世代火山研究推進事業で開発したSCOPE(車載型)と、その繰り返し観測により捉えた、大穴火口(吾妻山)周辺の地殻変動(2021年10月29日~2022年11月11日)Sentinel-1 SARから得られた新燃岳火口内の隆起と沈降火山災害に関する情報を的確に発信するためには、観測情報に基づいて火山活動を正確に把握することが重要です。特に、地殻変動は、火山下におけるマグマや水の移動を把握するうえで重要な観測情報の一つです。最近では、多くの火山にGNSS等の観測網が構築され、地殻変動を定常的にモニタリングできるようになりましたが、火山活動に伴う地殻変動は空間的に複雑な場合があり、その全容を把握するためには、これらの“点”での観測だけでは不十分です。その不十分を補うため、合成開口レーダー(SAR)を用いた地殻変動観測技術の開発を進めています。SARは人工衛星等に搭載されるレーダーセンサーであり、2時期に観測された画像を解析することにより、その期間に生じた地殻変動を面的に捉えることができます。また、衛星SARを用いた場合、現地観測を要しないので、火口のような立ち入り困難な場所の観測も可能という利点もあります。衛星SARを用いて新燃岳火口内の地殻変動を調査した事例においては、2011年の噴火が終息して以降、約6年にもわたってゆっくりとした隆起が継続し、2017年噴火の直前においては、急激に沈降が生じるという現象が発見されました。SARは、このような火口周辺で生じる火衛星SARは、解析技術やセンサーの高度化により、現在では有用な地殻変動検出ツールの一つとして用いられています。このような地殻変動情報をより効率的に火山活動把握に役立てるため、これまでに開発した解析手法を組み込んだ自動解析システムを構築し、SARによる地殻変動情報のデータベース化を進めます。また、火山活動の活発化が観測された場合等には、機動的に火山観測用可搬型レーダー干渉計(SCOPE)による観測を実施し、地殻変動情報のデータベースの充実化をすすめる予定です。さらに、SARを用いて降灰情報等も得る技術開発も進めています。このように、火山活動把握、火山発生予測の高度化に資することを目的とし、さらなるSAR観測・解析技術の開発を進め、予測・情報力の強化を目指します。山活動に密接に関係した地殻変動のモニタリングを可能にします。さらに、地上からレーダー波を照射することにより、衛星SARよりも高頻度に地殻変動観測を可能とする可搬型レーダー干渉計(センサー名:SCOPE)の開発も進めており、吾妻山では、火山活動に伴う地殻変動の検出に成功しました。これにより、時空間的により詳細な地殻変動把握が可能になると期待されます。火山防災研究部門小澤拓レーダーを用いた火山観測技術の開発
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