■衛星レーダによる地殻変動観測の高度化■地殻変動データベース活用に向けた統計学的異常検知■可搬型レーダー干渉計観測結果検証のための数値計算2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会吾妻山を対象とした統計学的手法に基づくデータ異常検知の例(左)と可搬型レーダー干渉計の観測幾何に対する視線距離変化の計算結果(右)活動的火山における地殻変動は火山の活動度を評価する指標のひとつであり,地殻変動観測の高度化は活動度が高まった際の推移予測や活動様式の理解につながる.近年,衛星搭載型合成開口レーダー(衛星SAR)のデータを用いることで,面的,かつ数メートルの空間分解能で地殻変動の描像を明らかにでき,火山の地下における圧力環境の推定の高精度化に貢献してきた.防災科研では文部科学省「次世代火山研究推進事業」の枠組みで,火山研究への幅広い利活用を目的とした衛星SARによる地殻変動データベースの構築と,機動的地殻変動観測の実現を目的とした可搬型レーダー干渉計の開発を進めている.これらの研究成果をより活用を見据えた統計学的異常検知手法と,可搬型レーダー干渉計による観測結果検証のためのシミュレーション手法を検討している.①データベースのための統計学的異常検知衛星SARの解析結果は人工衛星が照射するマイクロ波が地表に到達するまでの伝搬経路にあたる対流圏の水蒸気量擾乱や電離層の電子密度擾乱の影響を受ける.これらの影響は振幅が小さい火山性地殻変動と重畳し,しばしば地殻変動検出の阻害要因と当研究課題は火山活動に関する研究の枠組みで,SARによる地殻変動観測と数値計算による再現の高度化を通して,噴火準備過程と噴火推移の予測・情報力の向上を目指している.データベースに対するデータ異常検知については,適用事例を増やすとともに適用可能事例の検証や機械学習による適用なども検討する.今後,世界の宇宙機関や民間企業が相次いでなる.ここでは観測時に普遍的に現れ得るエラーの特徴をモデル化し,モデルの特徴との乖離の程度を定量的に評価することで,データの異常として火山性地殻変動に感度を持つことを明らかにした.②可搬型レーダー干渉計観測結果検証のための数値計算可搬型レーダー干渉計で検出し得る地殻変動の描像に解釈には観測幾何や地形の影響を考慮する必要がある.本課題では有限要素法による構造解析により,衛星SARで検出された地殻変動を駆動する圧力源構造を推定し,同様の変動が可搬型レーダー干渉計の観測幾何に対する地殻変動の描像を計算する.可搬型レーダー干渉計による観測結果との比較により,観測特有のエラーとの判別が実現する.SAR衛星の打上げを計画している.これまで以上の観測データの増加が見込まれることから,衛星SARによる地殻変動観測の高精度化も期待できる.可搬型レーダー干渉計の観測結果検証のための数値計算については,衛星SARによる観測結果とも合わせて実際の観測成果との比較をする.これらのデータを統合した圧力環境の推定手法についても今後は検討していく.SARによる観測成果の活用に向けた異常検知と数値計算手法の検討火山防災研究部門姫松裕志
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