令和4年度成果発表会
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■防災科研が中核となり火山噴火時に全国の火山研究者の力を結集し,噴火現象の解明を通して火山防災に貢献する仕組みの構築■噴火時以外にも,活動的火山において機動観測を実施し,噴火時に組織的な調査・観測が実施できる全国協力体制を準備2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会上段:火山機動観測実証研究事業の目指す方向を示した概念図.下段左:本年度実施開始した霧島山機動地震観測の実施地点.下段右:機動地震観測実施方法のシステム化・マニュアル化【目的】全国に約110の活火山を有する日本では,これまで火山災害により多くの犠牲者を出してきた.わが国では1974年から関係省庁,全国の大学等研究機関が協力して取り組んできた国家プロジェクトである「火山噴火予知計画」を進め,その成果は2007年より気象庁が噴火警報を導入するに至り,噴火発生時の住民避難に重要な噴火時期・場所の予測に基づく情報発表は,ある程度社会実装ができたと言える.一方,発生する災害の様態や噴火後の復興に大きく影響する噴火規模,噴火タイプ,推移予測は学術的にも未解決であり,これらの予測研究の推進が,今後の火山防災研究の大きな課題である.この課題解決には,高精度な調査・観測による噴火現象の理解を深める必要があり,噴火発生前後に起こる噴火の前兆現象や噴火時に起こる諸現象を,全国の多くの研究者が協力して,色々な計器や調査方法で調査・観測することが重要である.昨年度から開始された,文部科学省補助事業の「火山機動観測実証事業」は,防災科研が中核となり全国の研究者の連携体制を構築し,火山噴火時の緊急観測の他,噴火前の火山での地下構造調査等を実施する体制の構築を目的としている.昨年度は10月に小規模噴火が発生した阿蘇山において,緊急調査・観測を行なった.今年度は,今年1月から山体膨張これまでの日本における火山観測研究は,活動的な火山のそばの観測所で,長年にわたって観測を続けて研究を進める「火山ホームドクター」により成果を上げてきた.しかし,研究者・研究支援者の減少や大学・国立研究機関の法人化により,研究基盤が細り,従来のやり方が通用しなくなった.全国の色々な分野の研究者が協力して,火山噴火の際に大規模で戦略的なが開始した霧島火山で,今後の活発化を見据えて機動地震観測を実施し,緊急時の観測実施上の課題解決を行っている.また,研究者数が極めて少ない地球化学分野では,地球物理,地質研究者が火山ガスの採集の支援ができることを目指して,いくつかの火山において共同で火山ガス採取作業を実施した.更に,昨年度に続き,観測機材等の整備や開発を進めた.調査・観測を実施して成果を上げる必要に迫られている.来年度も引き続き,防災科研が中核になり以下のことを実施する.(1)クロスアポイントメント制度を用いた大学研究者との密な協力体制構築.(2)共同観測で利用する機材,その管理システムの充実.(3)噴火発生時の緊急観測の立案・実施.(4)噴火時の訓練も兼ねた平時の機動観測の実施.火山研究推進センター火山観測研究推進室森田裕一(共同推進者:藤田英輔,中田節也・小村健太郎・吉澤史尚)火山機動観測実証研究事業の推進

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