2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会つくば上空の雲の高度別出現頻度。2019年10月~2020年4月を1ヶ月ごとに整理。レーダー反射強度Z>-13dBZをしきい値として使用。現在、人間の活動が原因と考えられる地球温暖化が進行しており、これによって気象現象の極端化が生じるという研究結果が得られるようになってきました。この近未来の予測は、コンピューター上でシミュレーションモデルを実行させることによって行われていますが、各国の温暖化の予測結果にはばらつきがあります。このばらつきの最も大きな原因が、雲とエアロゾルにあることがわかってきました。したがって、このシミュレーション結果のばらつきを軽減させるために、現在の全球的な雲とエアロゾルの分布を正確に観測し、それをもとに、これまでよりも正しいシミュレーションモデルを構築することが必要とされています。全球で一様な観測を行うための有効な手段は衛星です。現在、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)の協力によって、雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE(EarthClouds,AerosolsandRadiationExplorer)」が進められており、2023年に地球観測衛星の打ち上げが計画されています。このEarthCARE衛星では、雲内の鉛直方向のドップラー速度を測定する機能をもつレーダーが世界で初めて搭載され、雲の量的測定の改善が期待されています。EarthCARE衛星は2023年の打ち上げを目指して計画が進められています。打ち上げ後に速やかな検証を行うために、検証用の観測方法の検討をさらに進めます。EarthCAREミッションにはセンサー製作、アルゴリズム開発、検証などで数多くの機関・研究チームが参加していますが、ミッションの成功にはそれぞれが確実に成果を上げる必要があります。先端機器である雲レーダーを所有する機関として貢献したいと思います。防災科研が関東地方に展開する5台の雲レーダーは、雨粒よりも小さな雲粒を観測できる機器として世界でも有数です。この地上雲レーダーを用いて、EarthCARE衛星打ち上げ後に各センサーの正確さを検証する計画に参画しています。打ち上げ前の現在は、地上雲レーダーの長期観測データから検証に有効な雲の特徴を導出し、また、衛星観測との同期の機会が多くないことから地上と衛星の有効な比較方法の検討を進めています。防災科研では、将来の防災に役立つ可能性のある多くの先端観測機器を導入し研究に用いています。例えば、雲レーダーは1時間程度の寿命をもつ積乱雲の観測のために導入されたものですが、そもそも世界中で数が少ない雲レーダーの中でもほとんどない機能(アンテナ走査機能、偏波機能)を持ち合わせています。こういった貴重な設備を活かし、地球温暖化時の災害のようなものも含め幅広い意味の災害把握・防災に貢献していきたいと思います。■地球温暖化による気象現象極端化の見込み■地球温暖化予測改善のために雲の観測が必要■雲レーダーを用いた全球衛星雲観測の検証を計画雲レーダーによる衛星雲観測の検証水・土砂防災研究部門大東忠保
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