令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会図1:(a)台風経路、中心気圧、最大風速を示す。(b)Tokyo LMAで観測した雷放電点の分布。(c, d, e)3時刻における降雨分布と雷放電点分布。×印はTokyo LMAで観測した雷放電点の位置を示す。図2:T1915の2019年9月10日7時10分における壁雲付近のレーダー反射強度(dBZ)とTokyo LMAで観測された雷放電点(□)の分布。謝辞本研究では、国土交通省が提供するXRAINデータを利用しました。また、このデータセットは、文部科学省の補助事業により開発・運用されているデータ統合解析システム(DIAS)の下で、収集・提供されたものです。台風やハリケーンの内部で発生する落雷の極性については、一般的な夏季雷雲より+CGの割合が高いハリケーンが存在すること、また、ハリケーンの勢力が弱まる時に+CGの頻度が増す事例が報告されている。本研究では、2019年9月9日に関東を通過した台風15号(T1915)に対して、+CGの発生特性と発雷時の雷雲の特徴について調査した。解析には、防災科研の3次元雷観測データ(Tokyo LMA)、フランクリン・ジャパンの落雷解析データ(JLDN)、気象庁のCバンドドップラーレーダーデータ、国交省の高性能レーダー雨量計ネットワークデータ(XRAIN)を使用した。T1915は、台風の最盛期から衰退期へ遷移する期間に関東に上陸し、衰退期に壁雲で多くの雷が発生した(図1)。台風中心が茨城県の東岸付近から沖へ進む期間(2019年9月9日6時43分から8時58分)に、Tokyo LMAとJLDNが52フラッシュを観測し、そのうち、+CGが29フラッシュであり(全フラッシュの56%)、通常の夏季雷雲に比べて+CGの占める割合が非常に高かった。雷雲内部の降水粒子分布は、壁雲における対流域の中層では霰が、その上層および風下では氷晶の存在が推測された(図2)。Tokyo LMAによって観測された雷放電点の分布から、上層で正電荷領域が明瞭に見られた。中層の負電荷領域は不明瞭であったが、上層の正と対になるように中層に負電荷領域が存在し、一般的な夏季雷雲に似た電荷構造を形成していたと考えられる。但し、何らかの原因で中層の負電荷領域は非常に小さい構造を形成し、その結果、+CGの発生割合が高くなったと考えられる。T1915の衰退期における壁雲では、+CGの割合が高いこと、中層の負電荷領域が小さいことを報告した。今後は、中層の負電荷領域が小さかった原因を明らかにしたい。水・土砂防災研究部門櫻井南海子■T1915の衰退期は、正極性落雷(+CG)が支配的■夏季雷雲の電荷構造に似た雷雲から多くの正極性落雷が発生2019年台風15号の雷特性

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