令和4年度成果発表会
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図1 伊勢湾における可能最大高潮の予測結果.(a) 現在気候時.(b) 地球温暖化時.図2 名古屋港における可能最大高潮による浸水解析の結果.(a)名古屋港付近の地形モデル,防潮扉開放条件の(b)18:50,(c) 19:10,防潮扉閉鎖条件の(d) 18:50, (e) 19:10の結果図3 名古屋港における可能最大高潮による漂流物解析の結果.名古屋ガーデンふ頭の(a)19:58,(b)20:00の結果,(c) CG画像の一例.a, bの白点は自動車を想定した漂流物を表す.■地球温暖化時に想定される伊勢湾における最大級高潮を予測■その元に名古屋港の詳細地形モデルを用いた浸水解析を実施■さらに名古屋港での自動車流出を想定した漂流物解析を実施2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会謝辞:本研究は,科研費・基盤研究(C) (一般)(課題番号:番号:18K04377 20K04069・22K03743 )の補助を受けてたことを付記し,感謝の意を表します.地球温暖化により台風災害の激化が懸念されている.そこで,伊勢湾を対象とし,大気・海洋・波浪結合モデルを用いて,地球温暖化時に想定される最大可能台風による高潮(最大可能高潮)の予測を行った(図1).現在気候であっても(図1a),伊勢湾台風時の名古屋港での潮位偏差の最大値(3.5m)を越える大きな高潮(最大5.5m)が発生しうること,温暖化時には(図1b),湾中央部から湾奥部の広い範囲で,潮位偏差が4mを超え,名古屋港で,最大で6.8mに達する大きな高潮が発生しうることがわかった.これらの値は,これまでの最大値のみならず現在の計画値を超える大きな値となっている.次に,その元に,名古屋港を対象とした詳細な地形モデル(図2a:格子幅2mの建物の形状および配置を組み込み)を作成し,上記の可能最大高潮を対象に,防潮扉開放・閉鎖の2条件で浸水解析を実施した(図2b-e).その結果,堤内地に侵入した高潮は建物の影響を強く受け,特に建物の間の細い道路で流速の速い流れが生じること,防潮扉の開放・閉鎖条件が流速の空間分布に大きく影響することがわかった.最後に,同じ地形モデルを用いて,可能最大高潮による名古屋港に集積されている自動車を想定した漂流物解析を実施した(図3a,b).高潮により海域に流出した漂流物は,水流だけでなく台風の強風の影響を強く受けるため,台風の風応力を考慮する必要があること,漂流物が建物に捕捉される・建物の間を通過するといった複雑な挙動を表現できることがわかった.これらの結果は,局所的な危険箇所を表現できるため,今後,地域の防災対策の検討や防災教育への活用が期待できる.これらの結果の活用方法の一例として,高潮による漂流物挙動を示すCGを作成した(図3c).伊勢湾における可能最大高潮の予測と浸水・漂流物解析所属名水・土砂防災研究部門氏名下川信也・村上智一

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