令和4年度成果発表会
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■防災科研が持つ特許技術を応用し,線状降水帯を解析■線状降水帯の気流構造を明らかに■気流構造からメカニズムに迫ることで予報精度の向上に資する2019.○○.○○○○○○○○○○○○○謝辞:本研究は,戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期「レジリエントな防災・減災機能の強化:課題②豪雨・竜巻予測技術の研究開発」(課題②)と第2期「国家リジリエンス(防災・減災)の強化」(テーマV)によって実施されました。本研究では国土交通省が提供するXRAINを利用しました。またこのデータセットは,文部科学省の補助事業により開発・運用されているデータ統合解析システム(DIAS)の下で収集・提供されたものです。2023.2.21令和4年度成果発表会上段・中段:平成29年7月九州北部豪雨最盛期の7月5日15時における高度1kmの降水強度(カラー)と水平風(ベクトル)。上段:従来技術による風速場の推定,中段:開発した新技術による風速場の推定。下段:新技術より導かれた平成29年7月九州北部豪雨における線状降水帯形成期~最盛期の内部構造の概念図。赤や黄色は雨が強い部分を示す。矢印は気流構造を示す。水害や土砂災害の原因となる大雨をもたらす線状降水帯については,いまだに形成・持続メカニズムに不明な点があり,予測が難しいハザードとして多くの研究がおこなわれている。防災科研では,戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期「レジリエントな防災・減災機能の強化:課題②豪雨・竜巻予測技術の研究開発」と第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化:テーマV.線状降水帯観測・予測システム開発」において気象場の客観解析システム(特許第6742019号:気象場の客観解析装置及び気象場の客観解析方法)の開発を進めている。本研究では,複数台のレーダーネットワーク内で発生した「平成29年7月九州北部豪雨」をもたらした線状降水帯について,形成・維持メカニズムの解明の一助となることを目的に,開発している客観解析システムを応用してその気流構造の解析をおこなった。図の上段・中段は解析された風速場を示している。従来技術を用いた解析(図上段)では降水がある部分でのみ風速が解析されているのに対し,新技術を用いた解析(図中段)では降水の周りの風も含めてより広い範囲で風速が解析できている。この新技術による解析を用いて,線状降水帯の気流構造の概念図を示したのが図下段である。線状降水帯に南西から暖湿気が供給され続けたことがわかる。気流構造だけでなく温度構造などもより詳細に調査を行うことによって,線状降水帯の発生・持続メカニズムを明らかにしていく予定である。線状降水帯の気流構造に迫る!水・土砂防災研究部門下瀬健一

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