2019.○○.○○○○○○○○○○○○○霧雨雲雨レーダーに近づく風遠ざかる風縦長横長2023.2.21令和4年度成果発表会東京都大田区に設置した防災科研の雲レーダーで2022年6月3日に観測されたガストフロント.図は仰角1.6度の観測結果を地図上に投影したもの.左図)雲や雨の分布(受信される電波の強さから計算されるレーダー反射因子).中図)電波のドップラー効果により解析された風速(青色がレーダーに近づく風,赤色がレーダーから遠ざかる風の成分を示す).右図)粒子の偏平度の分布(水平偏波と垂直偏波のレーダー反射因子の比).右上にガストフロントの模式図を示す.(実際には雨が降っている)雲の無い領域雨域よりも早いスピードで南下降雨減衰による検知不能領域雨の蒸発による冷気の形成雲の発生ガストフロント(冷たい空気の先端部)雨の蒸発による冷気の吹き出し(上昇気流の発生→雲の発生)水平収束降雨減衰による減小比較的高い反射因子差(昆虫の存在)雨が降る直前に冷たい風が吹いてくるのを感じたことはありますか?これは,(1)雨が地面付近で蒸発し,(2)その結果として空気が冷やされ,(3)冷やされて重くなった空気が周囲に広がっていく現象で,その広がる冷気の先端部分をガストフロントと呼んでいます.ガストとは突風を意味し,この先端部分ではしばしば突風災害も発生します.そして,このガストフロントが周囲の暖かく湿った空気を持ち上げることで新しい積乱雲が発生します.通常,ひとつの積乱雲の寿命は1時間程度です.近年問題となっている線状降水帯では,その風上側に新しい積乱雲が次々と発生しますが,これもガストフロントによると考えられ,ガストフロントは積乱雲群の振る舞いを決定づける要因のひとつです.このガストフロントは雨を伴わないので,通常の気象レーダーでは観測できません.防災科研では通常の気象レーダーでは観測できない雲の観測が可能な「雲レーダー」を開発し,積雲・積乱雲の早期検出に関する研究を実施していますが,この雲レーダーはガストフロントの先端部で発生する雲や,巻き上げられた小さな昆虫を観測することができます.雲レーダーで観測されたガストフロントの振る舞いを天気予報にとりこむことで,より精度の高い雨のの予報が可能になります.また,雲レーダーを用いて積乱雲の組織化の過程を明らかにすることにより,天気予報に使われる数値予報モデルの性能検証・高度化に役立つと期待されています.(レーダー反射因子)雲や雨の分布(ドップラー速度)風の分布粒子の偏平度(反射因子差)水・土砂防災研究部門前坂剛■雨滴の蒸発により形成される冷気の吹き出し■積乱雲の周りに新しい積乱雲を発生させる要因■線状降水帯などの積乱雲の組織化に関与雲レーダーで観測されたガストフロント
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