令和4年度成果発表会
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■大量のデータに基づく複数災害の比較■広域に適用可能かつ精度の高い土石流の場所・時間予測の定量的・実用的な基本法則の確立2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会・広島の3災害(1999・2014・2018年)土石流到達流域における、雨量指標値とb1値をプロット。b1は流域面積と流域起伏比(=流域勾配)から得られる地形パラメータであり、AまたはRが大きいほど増大する。・図中の曲線は、土石流リスクの境界を表すパラメータ。・赤枠で囲んだ3種類の雨量指標は、各災害のプロットが重なる豪雨に伴う土石流によって毎年多くの人命や財産が失われています。そのため、土砂災害の減災のために土石流の発生場所や発生時刻・流下範囲等の予測が強く求められています。しかし、土石流・斜面崩壊・地すべり等の斜面変動の発生場所や発生時刻を正確に予測することは、変位計などの地盤センサーを設置して継続観測を実施している個々の斜面を除けば、今のところ困難です。その最大の原因は、山地斜面の地盤が極めて不均質であるためと考えられています。そのため現状では、地形量と現地調査結果を組みあわせて土砂災害警戒区域が設定され、地盤の水分状態を表現する降雨指標と災害履歴を組みあわせて土砂災害警戒情報が発表されています。しかし、これらの情報は見逃しや空振りが多く、更なる精度向上が求められています。防災科研が推進する、「地形・地質・雨量を組みあわせた土石流危険度評価技術の開発」は、広域に適用可能かつ精度の高い斜面変動の場所・時間予測の定量的・実用的な基本法則を確立しようする取り組みです。そのために、大量の斜面変動履歴データと地形・地質・雨量情報等を用いた統計解析が有効かつ現状で最も不足しているアプローチであると考え、空中写真・衛星画像判読に基づく災害ごとの土砂移動分布図の作成とそれを使った解析を日々進めています。最終的には、小流域単位で、危険度ランクが降雨とともに変化する、リアルタイムハザードマップを完成させて、事前避難に貢献したいと考えています。データ解析の結果、地形・地質によって土石流の発生雨量が異なることがわかってきました。ここで雨量に関しては、土石流到達を適切に表す雨量指標の設定が重要になります。図に示す広島の花崗岩地域の事例では、降雨パターンが異なる1999年・2014年・2018年災害を比較した結果、6時間雨量・半減期8時間実効雨量と半減期1.5時間と72時間の実効雨量を組み合わせたR’値という3種類の雨量指標が、各災害の重なりが良いことから、リスクの境界を適切に表すことができる可能性があることがわかりました。将来的には、さらに広範囲の危険度評価を可能とすべく、基礎データの追加作成とデータ解析を進めて行きます。特に、確率雨量の概念を取り入れた新しい雨量指標の開発、地盤の特徴を反映する地形量の開発、植生情報による精度向上などが課題になります。以上の研究開発によって、全国レベルでリアルタイムハザードマップを構築することを目指します。地形・地質・雨量を組みあわせた土石流危険度評価技術の開発水・土砂防災研究部門若月強

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