令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○傾斜角:雪面の傾斜角より大きい雪面の斜面方位斜面方位:雪面と逆向き雪面の傾斜角2023.2.21令和4年度成果発表会図3 クレバス位置(白線)とオルソ画像(左)と積雪深分布(右)(等高線は国土地理院基盤情報より作成)図1 姥ヶ岳で確認されたクレバス.亀裂はクラックとも呼ばれるが,特に人に危険が及ぶものをクレバスと呼ぶことが多い.斜面上流側からは見えにくく,滑落の危険性が大きい.a) クレバスの傾斜角と斜面方位図2 クレバスの抽出方法の概要.傾斜分布と斜面方位を見ながらクレバスの外縁を手動抽出したb) 傾斜角分布c) 斜面方位分布クレバス雪庇d) クレバス抽出背景当部門では雪氷調査や雪氷災害調査にUAV(ドローン)で撮影した画像から,SfMという3次元データを作成する技術を使って積雪深分布の計測をおこなっている.吹雪災害における吹き溜まりの大きさや分布,雪崩災害における発生箇所や堆積区の確認などを行うことにより,災害の発生メカニズムや動態の解明のための詳細な検証データとして活用している.特に人が立ち入れない区域における調査手法としては格段に有効である.更に,RTK測位といった地上に設置した基地局からUAVの位置補正する技術と,PPK処理といった近隣の電子基準点を用いた位置補正をする技術により,従来行われていた多数の地上基準点の設置が不要となり,より精度良くかつ迅速にUAV空撮ができるようになった.クレバス形状測定の事例2022年4月に山形県の姥ヶ岳(標高1,670m)でクレバス滑落事故があった.ここではクレバスとは人に危険が及ぶ亀裂のことを呼ぶこととする(図1).当該地区はスキー場管理区域で広域であり,クレバスの数量や形状を把握することを目的に調査を実施した.UAV撮影,撮影画像の位置補正,SfM処理により雪面の標高メッシュを求め,GISにより雪面の斜面方位と傾斜角を解析し,図2のような方法でクレバスの地形的特徴により手動抽出した,また,雪庇についても区別ができた.図3は抽出されたクレバスの位置を示す.クレバスは53本抽出され,ほとんどは等高線に沿って伸びており雪庇部分に数多く発生していた.なお,積雪深分布は雪面の標高メッシュと国土地理院の地形標高メッシュとの差分で求めた.クレバスは細長い形状であることから矩形を仮定し,GISにより周長と面積が測定を求め,長さと幅を算出した.また,クラック外縁の積雪深をクレバスの深さとみなした.長さは平均38.4m,最大116.2m,幅は平均2.5m,最大2.5mであった.長さと幅については明確な関係はみられなかった.深さは平均12.9,最大20.4mであった.今後の展望・方向性クレバス形状抽出は,最終的には手動抽出となったが,今後は自動抽出方法を開発する予定である.これにより,全層雪崩の発生の予兆となるクラックの変化を定量的に追跡できること等が期待される.UAVを活用したクレバス形状測定事例の紹介雪氷災害研究部門荒川逸人・安達聖

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