令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会航空レーザ測量で明らかになったニセコアンヌプリ山域の2021年12月9日から2022年3月10日までの積雪深の増減山に多量の雪が積もると雪崩が発生しやすくなります.しかし,雪の積もり方は一様ではありません.強い風が吹くと,降っている雪や積もった雪が風で吹き飛ばされ,風が強い場所では積雪深が小さく,風が弱くなる場所では飛ばされた雪がたまって積雪深が大きくなります(これを吹きだまりと呼びます).防災科研では雪崩の発生予測をこれまで行ってきましたが,このような積雪の不均一性は考慮されていません.積雪深が不均一な場合には,吹きだまりのような雪が多い場所から予測よりも大規模な雪崩が発生して被害が大きくなる可能性があります.積雪深がどの程度不均一かを知るには,様々な箇所で積雪深を実測する必要がありますが,広い範囲や雪崩の危険性がある場所で実施するのは非常に困難です.そこで,航空レーザ測量を用いて広域の積雪深分布を求めることにしました.航空レーザ測量とは,航空機から地上に向けてレーザ光を照射し,地表面で反射して戻ってくるレーザ光との時間差から地上までの距離を求めることで標高や地形などを求める測量手法です.右の図は北海道のニセコアンヌプリ(標高1308 m)周辺で2021年12月と2022年3月に航空レーザ測量を実施し,約3今回計測したデータは,風で飛ばされた雪が吹きだまる過程を再現するシミュレーションの検証事例として非常に貴重なものです.将来的には山地の積雪の不均一性を考慮した雪崩予測につなげていきます.また,このデータは研究以外にも使えます.ニセコアンヌプリは雪崩事故が多く,とくに吹雪の最中など悪天候下での事故は吹きだまりが大きな原因と考えられています.雪崩事故を防止するための教育材料として,山の雪がどのように積もっているのか,なぜ不均一になるのか,どこにたまると雪崩の危険度が高まるのか,といったようなことをこの図から読み取ってもらえるように,スキー場関係者やスキーヤー・スノーボーダーなど研究者以外にも広く公開して使ってもらいたいです.箇月の間の標高差を積雪深の増減として求めたものです.この地域では北~西の方向から強い風が吹くことが多いため,山頂の北側など風上に位置する斜面では12月より積雪が減っている地点もあります.一方,風下側の尾根付近や谷底など雪が吹きだまりやすいところでは,厚さ12 m以上まで積雪が増えていることがわかります.■山地の積雪深は風などの影響により不均一と考えられる■雪が多くたまる箇所から雪崩が発生すると被害が大きくなりやすい■航空レーザ測量で厚さ12m以上の吹きだまりの存在が確認された雪氷防災研究部門伊藤陽一山地の積雪の不均一性をとらえる

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